「すれ違う時間とコロナの狭間で」

６

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そんな折、康二はまたもや偶然の出来事に遭遇する。セブンイレブンの駐車場で買い物を終え、車に戻ろうとした時、隣に停まっていた車がちょうど出ようとしていた。ふと目をやると、その車のナンバープレートが視界に入る。
「真子の車か？」康二は一瞬、胸が高鳴った。ナンバープレートは真子のものと同じだった。しかし、よく見てみると、それは真子の車ではなく、偶然同じナンバーの別の車だった。不思議な感覚が康二の胸に広がった。こんな偶然が続くことがあるのだろうか。気持ちが落ち着かないまま、その車が去っていくのを見送った。その後も、彼は同じナンバーの車をたびたび見かけるようになった。
「なぜこんなにもこの車を目にするんだろう？」康二は、運命のいたずらなのか、それとも何かが自分に伝えようとしているのかと考え始めた。真子との関係や、彼女の姿がどこか遠く感じられる一方で、この車の存在が彼に何かを訴えているように感じてならなかった。やがて、最後に真子と会ってから一年が過ぎようとしていた。康二はこの一年の間、真子と会うことなく、日々がただ静かに過ぎていった。これまで何度か診察の日に病院へ通ったものの、真子に出会うことは一度もなかった。そんなある日、いつものように病院の駐車場に車を停めようとした時、ふと視界に入った車が彼の動きを止めた。見覚えのある車――真子の愛車がそこにあった。思わず心臓が跳ねる。
「真子……」
胸の奥に眠っていた感情が、一気に蘇ってきた。これまで何度も彼女の車を目撃したことがあったが、そのたびに別の車だった。しかし、今目の前にある車は間違いなく真子のものだった。康二はその場でしばらく動けず、車をじっと見つめていた。この偶然がただの偶然なのか、それとも運命の再会を告げているのか、康二は自分の鼓動が次第に速くなるのを感じた。ついに、真子に会えるのだろうか。彼はゆっくりと病院の入り口へ向かって歩き始めた。康二は外来の扉を開け、中を見渡したが、真子の姿は見当たらなかった。期待していた分、軽い落胆が胸に広がる。彼は空いている座席に腰を下ろし、待つことにした。しばらくして、ふと視界の端にスラッとした若い女性が通り過ぎていくのが見えた。どこかで見たような雰囲気だが、真子とは思えず、ただ見送っただけだった。しかし、その数分後、急に気になり始めた康二は看護師に声をかけてみた。
「今さっき通ったのって、荻野さんじゃないですか？」
看護師は驚くことなく、軽くうなずいた。
「そうですよ、荻野さんです。」
その一言で康二の心臓が跳ね上がった。やはり、あの女性は真子だったのだ。康二は看護師の言葉を聞くと、反射的に立ち上がり、外来の出口へと急いだ。心臓が早鐘のように鳴り、足は自然と駐車場へ向かっていた。再び真子に会えるかもしれないという思いで胸がいっぱいだった。しかし、駐車場に着くと、彼女の愛車はすでに消えていた。彼はその場で立ち尽くし、駐車場の出口をぼんやりと見つめた。車が走り去ったばかりなのか、まだタイヤの跡が残っているようにも見えたが、真子の姿はどこにもなかった。
「遅かったか……」
康二は、手の届きそうで届かなかったその瞬間に、強い喪失感を覚えた。再会はほんの少しの差で逃してしまったが、心の中で何かが動き始めているのを感じた。真子との関係はまだ終わっていない。彼はそう確信し、再び彼女に会うチャンスを信じて、駐車場を後にした。