大嫌いな王子様

「た…ただいまです」

ここに帰ってくる感覚、、昨日からだからもちろんまだまだ慣れない。



「おい、すぐ着替えて仕事だぞ」

「はっはい」


バイトはもちろんしっかり頑張ります!



急いで着替えて部屋を出ると飯田さんがいた。



「本日のお仕事場所へご案内いたします」

「はっはい」


今日は床掃除じゃないのかな?



やってきたのは、面接をしてもらった部屋。


ここは…



「坊っちゃま、お連れしました」

「あぁ」


そこには服を着替えたキモ野郎がいた。



「今日からがお前のほんとの業務な。俺の身の回りの世話をしろ」


はい?


「身の回りとは…?」


「お前ほんとに理解力ないな」


あー、ほんまにムカつくな。
なんやねん、一言多いねん!!


私はどうやら心の中でボヤく時は関西弁になってしまうらしい。


「すみませんねぇ〜」

全く思ってないけど、一応謝ってみる。



「この部屋の掃除や、俺が頼む雑務とかをやれ。俺が快適に仕事しやすいようにな」


なんだこの偉そうな言い方に性格…

もっと言い方というか頼み方があるやろ!?



「かっかしこまりました〜…」

いや、我慢しろ私。
あくまでこのキモ野郎は雇い主。

お母さんたちの為に、お給料の為に頑張るんだ。

耐えるんだ。



パタパタ
えげつなく大きい本棚の埃を取りをし、床掃除。


「喉乾いた。コーヒーちょうだい」

「はいっ!」

急いでコーヒーを入れて部屋まで運ぶ。



「遅い」


はぁぁぁ!?

嫌、だめよ!私!
全ては家族の為!

こんなキモ野郎の発言は全て右から左に流すのよ!!



「お前…顔キモイぞ」


がーーーんっ

キモ野郎にキモイって言われた。


わかってるよ!?
凡人以下の顔面レベルだとは…!!

でも、やっぱりちょっとショックだよね。


「とっとと仕事続けろ」


ここはキモ野郎の仕事部屋なんだろうか?

この部屋も広過ぎて、時間がいくらあっても足りない。


窓も大きくてたくさんあるから、拭ききれない。
いや、それでも頑張るんだ。



「なぁ、肩揉んで」

「今窓拭いているんで」

「命令」


コイツは・・・!!


「肩甲骨らへんも」


ほんとにわがまま!!!



でも、私と同い年なのにパソコンやこんな難しそうな資料を見て仕事をしてるんだ。。

なんだかほんとに別世界の人だな。



「すごい…」

「え?」


わっ、心の声が出てしまった!



「あっいえ!同い年なのに仕事バリバリしてすごいなぁって思って…」


どうせまた偉そうに《お前と一緒にすんな》とか言われるんだろうな。




「いおも仕事頑張ってるじゃん」


え……


「ん?なに?」


意外過ぎる言葉に驚きが隠せない。

それに、朝もだけど“いお”って呼んでくれた。



「えっとあの…」


「肩揉みサンキュ。掃除に戻って」

「はっはい」


はぁー、キモ野郎がたまにキモくなくなるからわからない。



「ノロノロ仕事すんな」

99%キモイから、ほぼキモイんだけどね。





おわっ

繋がっている隣のスペースにいくと、資料が床に散乱している。


よっぽど忙しいのかな。


このままの方がいいのかな。
勝手に触るのはよくないよね。



んー、だけど…





「コーヒーおかわり持ってきて」

「はーい」


私はキッチンへ向かった。





アイツ、こっちの部屋で何してー…


「ったく。アイツは…」


俺が散らかしていた資料が、それぞれにまとめられて付箋まで貼ってくれている。

内容がわからないだろうから、間違ってるセットもあるけど


なんだろ、この気持ち


すごい嬉しい。



俺、なんでアイツにここまでしてんだ。

何がしたいんだ。


面白そうな奴だから、暇つぶしにそばに置きたいって思っただけだ。

そう、そうだ。

それ以上もそれ以下もない。




ただの暇つぶしだ。



ガチャッ

「お待たせしましたー」


やばっ!
俺は急いで机に戻った。
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