大嫌いな王子様 ー前編ー
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コンコンッ
「はい」
「俺だけど、入っていいか?」
暁斗くんだ!
「うん!」
私はベッドで横になっていたので、起き上がる。
「大丈夫か?痛むよな」
「ううん、もう大丈夫だよ」
「さっきいおを診てもらった先生に色々聞いてきたから。ひとまず安静にしろよ。明日は学校も仕事も休め」
「えっ大丈夫だよ」
「ダメだ。命令だから言うこと聞け。和希も休ませるから」
和希くん…
「和希くん、怪我の具合どう?大丈夫?」
「あぁ。アイツも心配ないよ」
「それならよかった」
少しホッとした。
暁斗くんと和希くん、色々と…ちゃんと話せたかな?
ギシッー…
暁斗くんがベッドに腰をかける。
「なぁ、いお」
「うん?」
「俺はさ…1年前アイツを守れなかったんだ。そして今回も……いおまで巻き込んでしまって、いおも守れなくて…」
か細くて
「ごめんな…ほんとに」
今にも泣き出しそうに聞こえる声。
「暁斗くんはいつも守ってくれてるよ?」
心配になるぐらい。
「今日だってそうだし、私は出会ってからずっと暁斗くんに守られてるよ。暁斗くんはね、私にとってヒーローだよ!」
なんか照れちゃうけど!
「和希くんのことも、ちゃんと守ったよ!1年前のことは…わからないけど、和希くんが暁斗くんのこと大好きなのは見ててわかるし、すごくお兄ちゃん子だよ」
お願い、暁斗くん
「だから、謝らないで。私たちが危ない目に遭って迷惑かけてごめんなさい」
暁斗くんが私に近づく。
そして、優しく抱きしめてくれた。
「背中…痛くない?」
「うん、大丈夫だよ」
暁斗くんの体温が伝わる。
あったかい。。。
「いお、ありがとう…」
私もぎゅっと暁斗くんを抱きしめた。
少しして、暁斗くんがゆっくりと離れる。
「4年前に母さんが亡くなってから、家の中が完全に父さんの言いなりになったんだ」
皆実家のこと。。。
初めて聞く。
「母さんがずっと俺たちを父さんから守ってくれてたんだけど、亡くなってから父さんの矛先は全部俺たちに向いたんだ」
「家の雰囲気は冷たく凍っているし、父さんからの命令で俺はずっと勉強。和希とも夜ご飯の時ぐらいしか会えなくなった。和希も勉強とかずっと言われてたけど、なかなか父さんの期待に応えられず、とうとうあのくそ親父は和希を見放したんだ」
父さんという言葉が、くそ親父に変わった。
暁斗くんの怒りがよくわかる。
「そんな状況も俺は全部わかってたのに、あの頃はなんとかくそ親父の期待に応えて…いや、一刻も早く文句なんか言わなせいようになって和希を自由にしてやりたかった。がむしゃらだった。でも…気付けば和希は家を出てたんだ」
その頃、まだ中学生だった暁斗くん。
なのにそんな大きなものをすでにたくさん抱えてたんだね。
「いおに初めて会ったあのケンカもさ、あの日の数週間前に和希がどっかの不良グループとつるんでるってやっとわかってな。それでしらみ潰しにああいう奴らの所に行ってたんだよ」
もう、これ以上はいい。
ぎゅっ!
私は暁斗くんの手を握った。
「暁斗くん、話してくれてありがとう。あのね、うまく言えないけど…もうひとりで抱え込まないで。飯田さんや牧さんや和希くん、私だってそばにいるんだから」
それに
「もうケンカもなしだよ。心も体も、もっと自分のことを大切にしなきゃ。暁斗くん、人のことばっかりだよ。自分もしっかり守ってあげなきゃ」
もっと自分を見てあげて。
ボロボロになっちゃうよ。
「私が暁斗くんを守るからね。だから、もっと話して頼ってよ。甘えてよ」
大好きだから。
「いお…」
ちゅっ
唇が触れるか触れないかぐらいの軽いキス。
まさかの私からしちゃった!!
顔は真っ赤。
「あ、あのね!!これはそんな気にすることではなくてですね!!えっとですね!!!」
わけわかんないことをペラペラ話す私。
「もっかい」
「へっ!?」
「もっかいしろ」
わぁー!!急に俺様モード入ったよー!!(これが通常運転なんだけど)
「や、あのですね!聞いてましたか!?さっきのはですね!」
「テメェ…演説みてぇなウザイ話し方すんな」
なんでこの状況でそんな俺様になれんのー!!??
しかも演説っぽいか!?
「いお…もっかい」
絶対、わかってしてる。
意図的にしてる。
俺様で煽って、こうして急に甘モード。
でも、それでも乗っかりたくなっちゃうんだ。
「目…瞑って……?」
恥ずかしくてたまらないけど、もう一度ちゅっとキスをした。
「…んっ!」
唇を離そうとすると、後頭部を押され今度は暁斗くんからのキス。