大嫌いな王子様 ー前編ー

ep.20 坊っちゃまたちの体育祭 1st.


「伊織、巻き込んでほんとにごめんな」

「ううん、私が勝手についていったの!それより怪我はどう?」

「大丈夫だよ」



次の日は結局3人とも学校を休んで療養中。
(暁斗くんはなんで休んだかちょっと謎だけど)

仕事もお休みをもらい、のんびり過ごす平日。
なんだか不思議な感覚。
和希くんとダイニングでお喋り中。
暁斗くんは部屋から出てこないので放置中。


「顔の腫れ、早くひいてほしいね」

「伊織のビンタが1番効いたわ」


ぎえっ!!

そうだ。。
私、あの時必死過ぎたんだけど……
ただでさえ怪我だらけの和希くんにビンタしたんだ。。


「わぁぁ!!本当にごめんなさい!!」

「ウソウソ!なんで謝んの?俺、あのビンタに感動したんだけど♪」


ふぇ??

「ビンタに感動…??」


「んー、正確に言うとビンタと伊織の言葉かな?っていうか、あんなに全力で俺を守ろうとしてくれてマジ嬉しかった…。ありがとう」


「ううん、当たり前だよ。和希くん、大切だもん。だから、もう危険なこと絶対しないでね」


「うん…」

「約束ねっ」

私は指切りげんまんで小指を出した。


きゅっ

「え?」

あれ??
和希くんは小指を出さず、私の小指を握った。



「伊織…俺、伊織のこと好き」



ん・・・?


今、なんて・・・?


「ほんと?よかったー!」

あ、きっと【ひと】としてだね!
和希くんが心を開いてくれてきたみたいで嬉しいなぁ。


「意味わかってる?」

「えっと…なにが?」



すり…

和希くんの手は私の小指から私の手のひらに移り、そして私の手を和希くんのほっぺに当てる。


「か、和希くん!?」


「女の子として伊織が好きなんだよ。これが恋なのかな?」


はい!!??


「えっと…よくわからないけど……違うと思う」


和希くんの言ってる意味がよくわからないけど、絶対違う!
私が昨日庇ったりしたから、自分の気持ちを恋と勘違いしてるだけだ!
それに気づかせてあげなきゃ!


「なんで違うの?」

「えっとね…たぶん昨日のことで私への気持ちを恋…?に勘違いしちゃってるだけだよ!ね?」


全然うまく説明出来ない。



「伊織の言ってる意味わかんない」


やっぱり!全然伝わってない!!



「別に俺、昨日で伊織を好きって思ったんじゃないし。前からだし。でも、この気持ちが“好き”ってことなのか自分でも経験したことなくてわかんないんだよね〜」


いや…私、もっとわからん。

さすが天然坊や!
発言が突拍子もない。



「ねぇ伊織、この気持ちってなにかな?教えてくれる?」

「いや…私にはわかんない…」

「じゃあさ、暁兄じゃなくて俺と付き合ってみない?そしたらこの気持ちもわかるかも」


なにめちゃくちゃなこと言ってるんだ!?


「そんなことするわけないでしょ!和希くん、ふざけるのもいい加減にー…」


ぎゅっ!

手を改めて強く握られた。


「ふざけてない。真剣なんだけど」


なに、この状況。
いったいどうしたら…


「あのね、和希くん私はー…」


バキッ!


なかなかの音がした。



「今すぐ離せ」


「暁斗くん!」


音の犯人は暁斗くんで、和希くんの頭をおもいっきりぶったようだ。



「いってぇ〜!ひでーよ、暁兄!俺、怪我人だよ!?」

「いおに触るな」


朝ぶりの暁斗くん。




「…ったくお前……来週ある体育祭、わかってんだろうな?」


ん?体育祭??


「あー、めんどくさそうだから出るつもりないんだけど」

「バカかテメェ、ただえさえ今まで学校行ってねぇんだから、行事はちゃんと参加しろ」

「えぇーやだよー。めんどいじゃん。意味ないじゃん」


ガシッ

暁斗くんが和希くんの胸ぐらを掴んだ。


「ウダウダうっせぇんだよ。出ろっつったら出ろ。お前に拒否権はねぇ」


「暁兄…俺、昨日から胸ぐら掴まれっぱなしなんだけど」


パッと手を離した暁斗くん。

「お前の自業自得だ」



体育祭か…


「あの!それって土日にあるのかな?応援に行けたりするのかな!?」


見に行きたい。
応援したい。
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