大嫌いな王子様 ー前編ー
「俺知らない」
和希くん…
「来週の土曜。中等部と高等部、合同であるから」
「行く!!絶対行く!!てか、行かせてください!!」
「マジで言ってんの?この時期だし湿気と暑さやべーよ?」
「それでも行きたい!!」
湿気とかどうでもいい!
暁斗くんの走ってる姿……
絶対見たいやん!!
写真撮りたいやん!!
あ、和希くんももちろん応援したいけども!!
「やったー!伊織が来てくれるなら俺頑張るー」
そう言って私に抱きついてきた和希くん。
ガシッ
暁斗くんが和希くんの頭を鷲掴みにした。
「しばらく動けねぇようにしてやろっか?」
「……ごめんなさい」
容赦ない兄だな。
うん、いつも通りの和希くんだな。
さっきのことは気にしなくていいよね。
「暁斗くんも和希くんも、何の競技に出るか教えてね」
「和希はリレー決定だろ」
「わかんないよーそんなの」
「和希くん、走るの得意なの?羨ましいなぁ」
「そんなことないから…///」
あ、和希くん照れてる。
ほんと、弟みたいで可愛い。
「お弁当作るね!!」
「いお、張り切り過ぎ」
そう言いながら優しく笑うから、ドキッとしてしまう。
なんだろ。
昨日のことがあってから、暁斗くんと和希くんの距離が縮まったような気がして嬉しいな。
「なにニタニタ笑ってんだよ。キモイぞ」
スンッ…
やっぱり、キモ野郎だ。嫌いだ。
————————————————
「やったー!晴れたー!!」
やってきました、優聖学園の体育祭。
「6月末なのにすごいな。絶対雨で中止だと思ってたのに〜」
「昨日ね、てるてる坊主作ったから」
私は得意げに、自作のてるてる坊主を和希くんに見せた。
「わぁ〜…伊織、下手だねぇ。。」
「んなっ!!」
「でも、伊織の愛が感じて嬉しい〜!」
そう言って、和希くんが私の頭をわしゃわしゃする。
「もうー!ボサボサになるから!」
ぐいっ
後ろから腕を回されて、体が後ろに倒れる。
「わっ!」
「朝からぎゃーぎゃーうるせぇ」
「暁斗くん!お、おはよう…」
朝からまさかのスキンシップにドキドキがうるさい。
「なんだこれ?」
暁斗くんが私の持ってたてるてる坊主を手に取る。
「てるてる坊主だよ!今日晴れるように作ったの!」
まじまじとてるてる坊主を見る暁斗くん。
そんな見られると、恥ずかしさが増す。。。
「ぶはっ!いお、下手くそ」
ドクンッ!!!
バックハグからの破壊力抜群の笑顔。
あぁ、朝から心臓がもたない。
私絶対早死にしてしまう。
「お前センスねぇな」
「暁斗くんのバカバカ!」
ふわっ
和希くんが私の髪に触れる。
「伊織、俺の応援してね?」
顔が近くて一瞬ドキッとした。
チュッ
へ!!??
暁斗くんが私のほっぺにキスをした。
「な、なななに…!?」
「てるてる坊主のお礼〜」
そう言って手をヒラヒラさせながら、車へと向かっていく。
和希くんの前でなんでキス!!??
キスをされたほっぺに触れる。
顔が熱い。
暁斗くんはほんとに読めない。
「……行ってくる」
「あっ行ってらっしゃい。あとでお弁当持って応援行くね!」
「うん」
絶対からかわれると思ったのに…
和希くんはキスに関してなにも言わず、暁斗くんと車に乗って学校へ向かった。
ーーーーーーーーーー
車の中。
「暁兄、挑発だったら無駄だよ?」
「お前もだろ?」
せっかく晴れたんだ。
やってやる。
「俺、負けないからね」
「百万年早ぇわ」
暁兄に勝ってやる。