大嫌いな王子様 ー前編ー

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「よしっ出来た!!」

朝4時起きで作ったお弁当。


暁斗くんたちを学校に送った飯田さんがもうすぐ帰ってくる。

そしたら、飯田さんと牧さんと3人で応援に行くんだ。

楽しみ過ぎる。



♪〜

こんな時間に電話?誰??

画面に表示されてるのは、まさかの暁斗くんの名前。
え!学校だよね!?



「もしもし!?」

「遅い」


あ、電話に出るのがですね。

「今学校だよね!?」

【遅い】はもはやスルーでオッケー。
だいぶ暁斗くんの扱いにも慣れてきた気がする。



「もうすぐ朝礼始まる」

学校にいる時に電話なんて珍しい。


「どうしたの?」


「…とっとと来い」


はい!?
いきなり命令口調!?


「9時半開会式だよね?もうすぐ出るから十分間に合うよ」

今はまだ8時15分。



「俺がよく見える所にいろよ。良い場所取れ」


…なにそれ。


「暁斗くん、そのための電話?」

「あ?文句あんのか」


もう…まったく……


「暁斗くん、頑張ってね。特等席狙って急いでそっち向かうからね」


素直じゃない暁斗くん。
そんな暁斗くんも愛しくてたまらない。



「テキトーにやるよ」


はいはい、頑張るんだね。


「電話ありがとう。すごく嬉しかったよ」

なるべく素直な気持ちを伝えよう。
ちゃんと言葉にして。



「こんなことで喜ぶな」

「私にとっては喜ぶことだよ」


ところで暁斗くん、朝礼は大丈夫か?



「…こんなことでいいなら、またかけてやる」


出ました、俺様の上から発言。
なのに、こんな嬉しくてドキドキしちゃうのは
私が暁斗くんという沼から抜け出せないから。



「約束だよ。じゃあ、また後でね」

切りたくないなぁ。



「早く来い。顔見せろ」


さっきまで一緒だったのに、なにこれ。
なんでこんなに甘々なの。
※本来、言葉遣いは全く甘くないが暁斗くんの世界線で考えるとかなりの甘いモードになる。



プーッ…

電話が切れた機械音が寂しく耳に響く。
ダメだ、私完全に沼ってる。

抜け出せる気がしない。




飲み物も用意して準備万端。


「伊織さん、飯田さんが戻ってきましたよ」

「はい!行きましょうか」


3人で優聖学園に向かった。





「着いた…」

昨年のクリスマス以来の優聖学園。
相変わらず大きな門にビクつく。


「私は車を停めてまいりますので、先に中へお入りください」

「わかりました。ありがとうございます」

飯田さんは学園専用の駐車場へ車を停めに行った。
私と牧さんは先にグラウンドの方へ場所取りに向かう。


「伊織さん、私までよろしかったのでしょうか?」

「それは私のセリフですよ。厚かましく暁斗くんたちに来たいって言っちゃって…。牧さんと飯田さんと一緒に来れて嬉し過ぎます。ありがとうございます!」

「伊織さん…ありがとうございます」


みんなで応援したい。
学校での暁斗くんを見たい。(あっもちろん和希くんもだけど)


すでにグラウンドは賑やか。
というか…ビックリしたのが…


「え!!グラウンドに元から椅子とかテントとかあるの!?」

これ、テレビとかで見る競技場みたいじゃんか。
さすがお金持ち学校・・・


「私、レジャーシート持ってきてた」

「シートは大丈夫ですよ。ご説明不足で失礼いたしました」

「飯田さん」


飯田さんがグラウンドにやってきた。


「もしよろしければ、オススメの場所がございます。いかがですか?」

「ぜひ!!」


飯田さんに案内してもらった場所。

「わぁ!ここ、全体がよく見えますね!」

こんないい場所が空いていて助かったー!


「飯田さん、この場所なんで知ってるんですか?」

「私は毎年ここで暁斗坊っちゃまを応援していました」

あ、飯田さんずっと来てくれてたんだ。


「えっと…暁おと…いやお父さんは?」

「旦那様はご多忙な為、お越しくださったことはございません」

「そう…ですか」


お母さんが生きていた時はー…


「奥様がご存命の頃は毎年来てくださっていました。それはもう、白熱した応援で」

そっか。

「よかったです!なんか…安心しました。やっぱり飯田さんってすごいですね」

「私が…ですか?」

「はい!大尊敬です!!」


気付けば周りは人でいっぱい。
みんなザ・お金持ちって感じで圧に負けてしまいそう。

「伊織さん、皆さん出てきましたよ」


グラウンドに生徒たちがやってくる。
暁斗くんと和希くん、どこかなぁ?
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