大嫌いな王子様 ー前編ー

しばらくして高2の入場になった。


…あ!あれ絶対暁斗くんだ!!
後ろ姿だけどわかる!
ん?隣は佐伯くんかな?


私はここだよー!
って、わかるわけないか。



「え……」


そんなことをひとりで考えていたら、暁斗くんがこっちに振り向いた。
そして目が合って、笑ってくれた。


こんなに広いグラウンド
こんなにたくさんの人
そんな中で、どうしてわかったの?

でも、謎はすぐ解けた



「やっぱり飯田さんは凄すぎですね」

「いかがなさいました?」


毎年ここで飯田さんが応援してくれてるのを、暁斗くんはちゃんと知ってるんだ。
だから、すぐに私たちを見つけてくれた。


「私、飯田さんや牧さんに負けないぐらい暁斗くんや和希くんを知っていきます」


絶対負けないんだ。


「ぜひ、宜しくお願いいたします」

「すでに伊織さんの方が絶対色んな坊っちゃまたちをご存知ですよ」


大好きが溢れて止まらない。

一緒の学校がよかったなって思ってしまうほどに。




選手宣誓が終わり、いよいよ体育祭が始まる。



「伊織さん、喉渇きませんか?」

「あ、少し…」

「こちらどうぞ。美味しいお紅茶淹れてきました。あ、冷やしておりますので」


こんな…優雅な運動会…というか体育祭の応援は初めてだな。
いや、これが異常で今まで私が経験してきたことの方が普通なんだよね。
これに慣れてはいけない。



「まずは和希坊っちゃまが玉入れに出られます」

玉入れ!!
なんか可愛い!!


あ!和希くん、見つけた!


「和希くーん!頑張れー!」

他の声援で絶対聞こえないだろうけど、頑張って大声を出す。



なんだかキョロキョロしている和希くん。


しばらくして、バチッと目が合った。
私は嬉しくて、手をブンブン振る。


すごく可愛い笑顔でこっちに手を振り返してくれる和希くん。
ほんと、弟みたいに……って、ん……?


女子生徒たちからの視線が痛く感じる。
しかも、応援に来てる人たちからも…
他校の女子生徒とかかな?


「皆実くん、まさかあの人に手を振ったの?」
「いや、あれじゃないでしょ」
「和希くんって呼んでた。馴れ馴れしいんだけど」


わぁーーー!!!
和希くんファンかぁー!!!

さすが皆実家の遺伝子。
和希くんにも、すでにファンがいるようです。


ちょっとおとなしくしておこっかな。。。




「伊織ー!!!」

そんな私の心配をよそに、和希くんの大声がグラウンドに響いた。


ひぇー!!なに!!??
私を呼んだ!!!???


まもなく玉入れが始まるって時に!!



「応援しろよー!!」


和希くーん!
それは、そこから叫ばなくてもいいことです!!



わぁ〜…女子たちからの視線が強烈に痛い。。
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