大嫌いな王子様 ー前編ー

お昼休みが終わって、午後の部が始まった。
綱引きやダンスなど楽しい競技がたくさん。


気付けばあっという間に最後の学年対抗リレー。


暁斗くんも和希くんもアンカーなんだ…。



「坊っちゃまたちは昔から運動系は基本お得意で、和希坊っちゃまは特に走ることに長けておられます」


「この前暁斗くんも言ってました。和希くんが速いって」

「どちらが勝つか…楽しみですね」

「はい…」


ほんとに、どっちが勝つんだろう。



ーーーーーーーーーーー

「うげー。やっぱ暁兄アンカーじゃんか」

「ジャンケンで負けたんだよ」


和希は絶対アンカーとわかってたから避けたかったのに。



アンカーの配置場所に向かう。


「なぁ暁兄、賭けしない?」

「しねぇ」

「即答かよ!!」

「ロクなことじゃねぇだろ」


ちぇーっとふてくされてる和希。



「でも、強制参加で!」

「あ?しねぇって言ってんだろ」

「俺が勝ったら伊織とデートさせてよ」


ほら、やっぱロクなことじゃねぇ。


「無理。そもそもいおを賭けの対象にすんな」

「暁兄、俺に負けるのが怖いんだ〜」


ブチンッ



「そんな口たたけねぇようにしてやるよ」




まんまと挑発に乗ってしまった。





空砲の音でリレーがスタートした。


学年で選ばれた5人で走る。


今の所トップは高1か。
俺たち高2は4番あたり。



3番手が抜かして2位になった。
和希の中3は3位。



「ほぼ同着ぐらいでお互いスタートになりそうだね」

「あぁ」


和希は余裕そう。


俺は…なんだこれ。
珍しく緊張してる?


もうすぐ4番手がこっちにやってくる。
まさかの中3と高2がデッドヒート。



チラッといおの方を見る。

バチッと目が合った。


ん?なんか言ってる?
周りの声援でいおの声は聞こえない。


いおがタオルみたいなものを広げた。


【暁斗・和希ファイト!!!】

ってペンで書かれてた。



「ぶはっ!!!」

手作りの旗のつもりか??

可愛すぎる。



「なに笑ってんの?」

「別に」

和希には教えてやんない。



もうすぐだ。



「暁兄、俺本気だからね?」


バトンを受け取る。
俺の方が1秒ほど早かった。



「俺だって本気だよ」


絶対に負けない。
いおがそばにいないと、俺がダメなんだ。



やべ…

やっぱ和希はえーなぁ。



でも絶対負けられない。




ーーーーーーーーーー


すごい…
暁斗くんと和希くんのほぼ一騎打ちだ。

2人とも速すぎる。



どっちにも勝ってほしい。

だけど……

暁斗くん……!!




先にゴールをしたのは、暁斗くんだった。
ほぼ同時に近かった。
暁斗くんが1歩速かった。



グラウンドは歓声でいっぱい。


私も嬉しくてその場でジャンプ。
飯田さんと牧さんがその様子を見て笑ってた。




あ…また暁斗くんと目が合った。
さっきも…
私は大きく手を振る。

あれ?なんか言ってる?

遠いし歓声で全然聞こえなくてわからない。



よく目を凝らす。
口の動きでわかるかな??



す?


き?



ボンッ!!
一気に顔が赤くなるのがわかった。

まさかまさか!!
暁斗くんがあんな所でこんなこと言うわけないよね!?
私ってば、なんちゅー自分に良いように解釈を…

読唇術は諦めた。




ーーーーーーーーー


「ハァハァ…やーっぱ負けちゃったか」

「ハァ…バトン受け取るのが遅かったら確実負けてた」


こんな必死に走ったのいつぶりだ?




「片想いぐらいはいいよね?」

「…ふざけんな」


俺はそう言って和希の頭をクシャッとした。



「なぁ暁兄、楽しかったね?」


「あぁ。すげー楽しかったよ」



いおの方を見る。

嬉しそうにこっちに手を振ってる。


あぁ、今すぐ抱きしめたい。



絶対わかんねぇだろうけど、言ってみるか。



俺は口パクで「すき」と言った。
自分でしといて、柄にもないことで恥ずかしくなってきた。



早くいおに触れたい。
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