大嫌いな王子様 ー前編ー
「だから古いって、タンマなんか」

有難いことに、最近暁斗くんがツッコんでくれるようになった。




「言う!言いますから!!」


ドキドキがすごくて、ちょっとうまく息が出来ない。




「ひ…引かないでね……?」

私は涙目で暁斗くんを見る。
嫌われないかな。。


「なに?」

でも、さっきまでとは違ってすごく優しい声のトーンにまた心がグラッとする。




「に…二人三脚の時とかさっきとか…女の子と暁斗くん話してて……すごく優しく笑ってたし、女の子に触ってたし…それに」


わぁー。絶対引かれるよ。


「さっきの子、暁斗くんって名前で呼んでた……」


私は自分が情けなくてたまらなくなり、下を向いた。



「ご、ごめんね!!忘れてください!!!今すぐに!!!」




ぎゅう!!!


いきなり力いっぱい抱きしめられた。


「暁斗くん!?」


そして私の方を見る。


その顔は優しく笑ってた。



「へぇ〜。いおが俺にヤキモチか?」



ドキンッ!!

「えっ!!」


これがヤキモチ!?
そっか、ヤキモチなんだ!!
顔がさらに赤くなる私。



「もっと妬けよ」

こんな時まで俺様なのか。



「やだ…」

「なんで?」


「暁斗くんが好きで……胸がチクチクして…苦しいんだもん…」


自分の口からこんな言葉が出るなんて。



「んっ!!」

暁斗くんがキスをした。
いきなりの深いキスに一気に頭がボーッとする。


体に力が入らなくて、その場にへたっと座ってしまった。

だけど、キスは止まらない。



「暁斗くん…くるし…」

でも、やめてほしくない。



そっと唇が離れる。


「…暁斗くん、引いてない……?」

「なんで引くんだよ?」

「だって私…あんなこと思っちゃって…ひゃっ」


私のTシャツの首元を少し下ろして、鎖骨の少し下に暁斗くんがキスをした。


チクッ
少し痛みが走った。

そして二の腕の裏にもキスをされ、また痛みが走る。

ダメだ…頭がボーッとする。



二の腕を見ると、赤いアザが。


こ、これはまさか…
キスマーク!!??



ボボボボッと私の顔はさらに赤くなる。



「俺のものって印。いおもつけて」


えぇ!!??


「待って…!私したことない…」

「教えてやるから」


こんな恥ずかしいこと教えてもらうのも、それはそれでヤバイ!!!


暁斗くんが体操着の襟元をグイッと引っ張り、鎖骨あたりを出した。



今の私は麻痺してるんだ。
この甘い時間に。
私は暁斗くんの鎖骨の下にキスをした。



「いお…そのまま吸ってみて?」

その言葉だけでドキッとしてしまう。


私はゆっくりとチャレンジしてみた。



そっと暁斗くんから離れる。


ほんの少し、赤いアザが出来ていた。

こ、これは成功なのか…?



「下手くそ」


ガーーーーンッ!!


甘い空気を一瞬でぶち壊すひと言。



「どうせ下手だもん!もうしないからね!」


グイッ
出ましたよ、お得意の顎クイが。



「なんで?またしてよ」

そしてまた一瞬で甘い空気に戻すんだ、この意地悪王子様は。




「わかったか?いおは俺はのもので、俺はいおのもの」



私は小さく頷いた。



「もっと妬けよ。俺でいっぱいになれ」


そう言ってまた優しくて、でも深いキスをたくさんくれた。





「あ!暁斗くん、片付けは!?」

「めんどい」

「ダメです!!」


急いで屋上を後にした。

甘い印を感じながら。



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