大嫌いな王子様 ー前編ー

ep.22 お誕生日デート


キーンコーン…

「答案用紙、後ろから回収してー」



や、やっと終わった…


「期末やっと終わったね。どうだった?」

「鬼コーチのおかげでなんとか…そこそこ出来たと思います…」


私は達成感と疲れで意識が遠のく寸前。


「いいじゃん、御曹司くんとふたりっきりの勉強会を毎日なんて。憧れるわ。どうせ甘々なんでしょ?」


みっちゃん、それは大きな誤解…いや勘違いです。


「前も言ったけど…あの人のスパルタはえげつないんよ。キモ野郎がレベルMAXになるから」


甘々?
そんなもの、皆無。
というか、そんな次元の話ではない。
キスやハグなんて、あの体育祭の日以来してない。




(回想)

「テメェ、何度言ったらわかるんだ?ここはこっちの公式を使うんだよ」

「…出来た!」

「なにが出来ただ!間違ってんじゃねぇかよ」


「ここ全部正解するまで寝んなよ」


それってパワハラとかいうものじゃないですか!?


「暁斗くんが頭良すぎなんだよ〜!」

「お前ほんとに奨学金貰えてんのか!?信じらんねぇ」


(回想終了)


ほんとはまだまだいっぱいあるけど、思い出したらキリがない。



「さすが御曹司くんだね。御曹司くんだって期末だったんじゃないの?」

「うん。暁斗くんたちは昨日終わってた」


なのに、私の勉強に付き合ってくれてたんだよね。


「やっぱり優しいよね…」

「十分優しいでしょ。ちゃんとお礼しなね?」


お礼…



「みっちゃん!!来週の木曜日、暁斗くんのお誕生日なの!」

「そうなの?試験休み期間だし、遊びに行けんじゃないの?優聖は試験休みとかあんの?」

「うん。今日から休みで来週の金曜日が終業式みたい」


「ラッキーじゃん。お祝いどうすんの?」


「えっと…デートに誘っていいと思う?」


実は私からデートに誘うのは初めて。
今までのお出かけも、【デート】と考えていいのかわからない所もあるけど、暁斗くんが全部誘ってくれた。


「伊織、変わったね」

「え?」

「自分から誘ったりを考えたりとかさ。御曹司くん、絶対喜ぶよ。ちゃんと誘いなよ?」



うるっ…
みっちゃんの言葉に涙が出てくる。



「みっちゃーん!!!」

私はみっちゃんに抱きついた。

「はいはい」

私のお姉ちゃんみたいな存在。




みっちゃんにデートのオススメスポットをたくさん聞いて勉強。


そして夜。

仕事も終わり、お風呂も入り終わった22時過ぎ。



コンコンッ

「はい?」

「暁斗くん、入っていい?」



ガチャッ

「どうした?もう試験終わったろ?」


いえ、勉強のために部屋に来たのではありません。



「暁斗くん!!」

「は!?なに?」


いきなりの私の大声に驚いている様子。



「ら…来週の木曜日って学校お休みだよね?その…予定空いてる?」

「来週の木曜?」

手帳を確認する暁斗くん。



「仕事だけど。どうした?」



ガーーーーンッ!!!

そうだ!!仕事あるの忘れてた!!!!


え、待って!

私もやん!!



ヤバイヤバイ、暁斗くんのお誕生日って浮かれてお休みお願いするの忘れてたし、そもそも暁斗くんの仕事の都合考えてなかったし!!


私はその場でうなだれた。


「なんなん…いったい」

私の意味不明な行動にちょっと引いてる様子。



「なんにも…ありません」


私は部屋を出ようとドアノブに手をかけた。



バンッ

後ろからドアを手で押さえられた。



「なんかあるんだろ?ちゃんと言え」


お誕生日とは…なるべく言いたくない。
当日だしバレるだろうけど、なるべくサプライズで…
でも仕事に迷惑かけたくないし。。



「いお?マジどうした?」


私はゆっくりと振り返る。



「1日仕事?夕方からとかでも…もし空いてたらどこか…出かけませんか?」

謎の敬語。


「そ…その場合大変申し訳ないのですが…私も早上がりをさせていただけたら……別日にしっかり残業します!!こんなワガママほんとにごめんなさい!!」



しーーーん

しばらく続く沈黙。




や、やっぱダメだよね。。
仕事にこんな私情も混ぜちゃってるし。


「ごめんなさい。やっぱり大丈夫です。失礼します」

私はもう一度ドアの方へ向く。




「その日、午前中で終わらせる。お前も午前中で上がれ」


え?


「いい…んですか?」


「その日、大した仕事ねぇし余裕。牧さんに言っておくからお前もちゃんと上がれよ」


ぱぁぁぁっ!!
私の心が晴れていく効果音が自分の頭の中で鳴る。




「はい!!ありがとうございます!!」


ヤバイヤバイ!!
嬉し過ぎる!!!



「では!」

「もう行くのかよ」



私はウキウキで部屋のドアを開ける。


「暁斗くん!木曜日、オシャレしてね!……デートだからね!!」

私絶対顔赤い。
デートって言葉を使うだけで、こんなにもドキドキしてしまう。


顔が赤くなってるのをバレないようにする為、私はそそくさと暁斗くんの部屋を後にした。





「…デートか……」

いおが急いで部屋を出てくれて助かった。
俺…絶対嬉しいのが顔に出てる。


あのバカ…
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