大嫌いな王子様 ー前編ー
extra ep. special day
パーーンッ
いおとの遊園地デート後、家に着くといきなりなにかの破裂音。
その音の正体はクラッカー。
和希や飯田、牧さんたちが玄関で鳴らしてくれた。
「暁斗坊っちゃま、お誕生日おめでとうございます!」
「暁兄、おめでとう〜!!」
やべぇ。
嬉しい。
「暁斗くん、夜ご飯食べたらケーキでお祝いしようね」
隣で可愛く笑ういおが愛しくてたまらない。
すっげー抱きしめたいけど、俺の理性よ耐えろ!!
みんないるんだ!!
「暁兄、俺手紙書いたんだよ!」
和希が?珍しい。
受け取った手紙を見ると
【暎兄 たん生日おめでとつ!】
……ん?
暁の漢字が間違ってる
誕がひらがな
おめでと“つ” ってなんだ
「おい…和希、期末の現国は何点だった…?」
「なんで今〜?確か26点だったかな」
バキッ!
「いてー!!!」
俺は和希の頭を殴った。
「とっとと勉強しろ!!」
「さっきまでカテキョとやったよ!」
「なんだこの手紙は!テメェの兄貴の名前ぐらい書けろよ!」
母さんがいた頃を久々思い出した。
俺や和希の誕生日は、母さんや飯田たちが毎年祝ってくれてた。
明るかった母さん。
盛大に祝ってくれてすげー嬉しかったけど…
なんでか、どこか寂しい気持ちがあって
でも、その気持ちを誰にも言えなかった。
いや、言っちゃいけないと思ってた。
母さんが亡くなって和希が出て行って…
この数年、誕生日なんて意識もしたことなかった。
飯田たちが声をかけてくれてやっと気づくレベル。
今年もそう。
忘れてた。
なのに、こんな幸せな日がくるなんて…
「和希くん、勉強頑張らなきゃヤバイね」
「伊織に言われたくないよ」
「私、一応奨学金もらってるんだからね」
「……」
「無視ダメー!!」
賑やかな俺の周り。
「暁斗くん!料理長がお誕生日特製コースを作ったって言ってたよ」
気づけば俺の世界に入ってきてくれたいお。
「みんなでメシ食うぞ」
最高の誕生日。