大嫌いな王子様 ー前編ー
ep.23 突然の訪問
終業式も無事終わり、夏休みスタート。
そんな私は夏休みも仕事に励む。
「伊織〜お腹空いた。おやつちょうだい」
「自分でしてください」
「えっ!冷たくない!?」
「それぐらい自分で出来ますよね?」
「ケチ!ドケチ!」
そんな私と和希くんのやり取りを暁斗くんと飯田さんが見てた。
「伊織様のおかげで、和希坊っちゃまのワガママが少しずつ直っていますね」
「いお、そんな奴の言うこと全部無視しとけ」
「わぁー!暁兄も飯田さんもみんな嫌いー!」
甘えたな和希くん。
しっかり者の暁斗くん。
そんな楽しい日常が当たり前になっていた。
ピンポーンー…
「出て参ります」
飯田さんが玄関に向かった。
しばらくして飯田さんが戻ってきた。
「伊織様…あの……」
私は暁斗くんや和希くんと喋っていた。
「はい、どうしましたか?」
「阿部…隆也(たかや)さんと仰る方が来られています」
ドクンッ…
「え……」
なんでここが…
「いお、その人って…」
「行きます!私行くので、皆さんはここにいてください!」
暁斗くんの言葉を遮り、私は急いで玄関に向かった。
「飯田」
「はい。承知しております」
ドクンドクンッ
玄関に着くと、そこには私の大嫌いな人が立っていた。
「久しぶりだな、伊織」
「お父さん…なんでここにいるの…?」
意味わかんない。
どういうつもりでここにいんの?
「前に家に行ったら引っ越してて…そしたらこの前偶然お前を見かけてさ」
「…それで?後つけたわけ?」
「声かけたかったんだけどな。なんか緊張しちゃって」
最低…!
「なに考えてんの!?よく平気でここに来れたわね!?帰って!!今すぐ!!」
暁斗くんたちにバレないうちに!
「伊織、せっかく会えたのに…」
「黙って!早く出てってよ!」
やだやだ。もう最低…!
「落ち着け」
お父さんを必死で帰そうとしている私を止めたのは、暁斗くんだった。
掴まれた腕から暁斗くんの体温が伝わる。
そのおかげで少しだけホッと出来た。
「コイツになにか用でしょうか?阿部隆也さん」
ドクンドクンッ
「いや、会いに来ただけで…」
絶対嘘だ。
「そうですか。わかりました」
暁斗くんに知られたくない。
「少し奥で話しませんか?」
「え!?なんで!?」
暁斗くんがお父さんを引き止めた。
「いおはこのまま仕事してて」
「でもっ」
「あとで呼ぶから」
俺様じゃなくて、すごく優しい声のトーンと表情で私に話してくれる暁斗くん。
私の気持ちを全部わかってるかのように。
「阿部様、ご案内いたします」
飯田さんがやってきてお父さんを奥の部屋へ案内する。
ポンポンッ
私の頭を撫でて暁斗くんも奥の部屋へ向かった。
お父さん…平気で現れて…
「伊織〜!さっきのお父さんなんだ?ムカつく奴なの?ってか、伊織って母子家庭じゃなかった?」
空気を読まず?というか…
和希くんがひょうひょうと聞いてきた。
でも、その自然さに逆に心がちょっと落ち着かされた。
「はい。ウチは母子家庭です」
「でも名字もふたりとも【阿部】だね」
「…はい。離婚はしてないので」
そう。
お父さんはある日、私たちを置いていなくなった。
家にあるお金を全部持って消えた。
そんな私は夏休みも仕事に励む。
「伊織〜お腹空いた。おやつちょうだい」
「自分でしてください」
「えっ!冷たくない!?」
「それぐらい自分で出来ますよね?」
「ケチ!ドケチ!」
そんな私と和希くんのやり取りを暁斗くんと飯田さんが見てた。
「伊織様のおかげで、和希坊っちゃまのワガママが少しずつ直っていますね」
「いお、そんな奴の言うこと全部無視しとけ」
「わぁー!暁兄も飯田さんもみんな嫌いー!」
甘えたな和希くん。
しっかり者の暁斗くん。
そんな楽しい日常が当たり前になっていた。
ピンポーンー…
「出て参ります」
飯田さんが玄関に向かった。
しばらくして飯田さんが戻ってきた。
「伊織様…あの……」
私は暁斗くんや和希くんと喋っていた。
「はい、どうしましたか?」
「阿部…隆也(たかや)さんと仰る方が来られています」
ドクンッ…
「え……」
なんでここが…
「いお、その人って…」
「行きます!私行くので、皆さんはここにいてください!」
暁斗くんの言葉を遮り、私は急いで玄関に向かった。
「飯田」
「はい。承知しております」
ドクンドクンッ
玄関に着くと、そこには私の大嫌いな人が立っていた。
「久しぶりだな、伊織」
「お父さん…なんでここにいるの…?」
意味わかんない。
どういうつもりでここにいんの?
「前に家に行ったら引っ越してて…そしたらこの前偶然お前を見かけてさ」
「…それで?後つけたわけ?」
「声かけたかったんだけどな。なんか緊張しちゃって」
最低…!
「なに考えてんの!?よく平気でここに来れたわね!?帰って!!今すぐ!!」
暁斗くんたちにバレないうちに!
「伊織、せっかく会えたのに…」
「黙って!早く出てってよ!」
やだやだ。もう最低…!
「落ち着け」
お父さんを必死で帰そうとしている私を止めたのは、暁斗くんだった。
掴まれた腕から暁斗くんの体温が伝わる。
そのおかげで少しだけホッと出来た。
「コイツになにか用でしょうか?阿部隆也さん」
ドクンドクンッ
「いや、会いに来ただけで…」
絶対嘘だ。
「そうですか。わかりました」
暁斗くんに知られたくない。
「少し奥で話しませんか?」
「え!?なんで!?」
暁斗くんがお父さんを引き止めた。
「いおはこのまま仕事してて」
「でもっ」
「あとで呼ぶから」
俺様じゃなくて、すごく優しい声のトーンと表情で私に話してくれる暁斗くん。
私の気持ちを全部わかってるかのように。
「阿部様、ご案内いたします」
飯田さんがやってきてお父さんを奥の部屋へ案内する。
ポンポンッ
私の頭を撫でて暁斗くんも奥の部屋へ向かった。
お父さん…平気で現れて…
「伊織〜!さっきのお父さんなんだ?ムカつく奴なの?ってか、伊織って母子家庭じゃなかった?」
空気を読まず?というか…
和希くんがひょうひょうと聞いてきた。
でも、その自然さに逆に心がちょっと落ち着かされた。
「はい。ウチは母子家庭です」
「でも名字もふたりとも【阿部】だね」
「…はい。離婚はしてないので」
そう。
お父さんはある日、私たちを置いていなくなった。
家にあるお金を全部持って消えた。