大嫌いな王子様 ー前編ー


「皆様、大変お騒がせしました。仕事もサボってしまって申し訳ありません」


暁斗くん、和希くん、飯田さんに謝った。


「牧さんにも後できちんと謝っておきます」


「今からちゃんと働け。それに親父さんと話せって言ったのは俺だからな。サボりじゃねーよ」



またこうして優しくしてくれる。



「ちゃんと話せてよかったね」

和希くんも笑ってくれた。




「ありがとうございます!仕事頑張ります!」


私は仕事に戻った。




「やっぱ伊織可愛いなぁ〜。好きだなぁ」

「……………」

「ねぇ暁兄、褒めてよ。俺さ、さっきズルするのやめたんだよ」

「あ?」

「【弱ってる時につけこむ】のは違うなと思って」


挑戦的な和希の目。
本心なのか、ふざけてるのか


「俺は絶対負けねぇよ」


まだ “ふざけてる”って思うようにしよう。





ーーーーーーーーーーー



コンコンコンッ

「はい」

「失礼します」


暁斗くんの仕事部屋にコーヒーを持ってきた。



「サンキュ。そこに置いててくれ」

「はい」



暁斗くんにちゃんとお礼言わなきゃ。



「あのね…暁斗くん、さっきはー…」

「いおのペースでいいんじゃねぇか?」

「え?」


私が話だそうとした時、暁斗くんも話しだした。



「親父さんとのこと、ゆっくりでいいと思う」


暁斗くんは私に多くを聞いてこない。


「話したくなったらいつでも話せ。聞いてやる」


ほらね、こうして俺様だけど私のペースに合わせてくれる。




「ありがとう…。暁斗くんに出会えてなかったらお父さんとも…あんな風には話せなかったと思う。っていうか、絶対!」


私がああしてお父さんと話せたのは、暁斗くんのおかげ。
そして、ここにいる皆さんのおかげ。




「バーカ」

あ、絶対照れてる。



「暁斗くん、照れてる??」

プイッと後ろを向いてしまった暁斗くんをからかった。

調子に乗ってしまった。




グイッ


「ひゃっ!」


気付けば、ソファーに倒されてしまっている。



「なに調子乗ってんだ?おしおきしねぇとだな?」



ギエーッ!!!!
俺様キモ野郎に変身してるーーー!!!!!!


しかも、おしおきですと!?



「えっえっと!!はい!!ほんの少しだけ調子に乗りましたが、もう乗らないんで許してください!!」



暁斗くんがフッと優しく笑った。
私、やっぱり視力落ちてる。
この状況で優しく見えるなんて。



「…大人しくおしおきされてろ……」


暁斗くんの顔がゆっくり近づいてくる。

私もそっと目を閉じる。





コンコンコンッ

「坊っちゃま、失礼いたします」




ギエーッ!!!!!! (part2)



「次回の取締役会での…っとおや、伊織様もいらっしゃいましたか」

「飯田さん!ちょうどコーヒーを持ってきたんですよ」


ドキドキからか、かなり大きい声の私。
なんとかすぐ離れて私は掃除をしてるフリをした。



「あぁ。置いててくれ」

そして、かなり不機嫌な暁斗くん。




「おい、とっとと仕事に戻れ」


ぎゃー。完全にキモ野郎になってますよ。



「はい…戻ります」


私はショボンとしながら部屋を出る。





ヴーッ


少ししてスマホのバイブがなった。



暁斗くんからのメッセージ。



『夜、部屋行くから』



ドキッ!!!



わわわ、私なにドキドキしてんのよ!!



数年ぶりにお父さんに会えた日

色んなことが起こりすぎて、私の頭の中はパニックだ。
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