大嫌いな王子様 ー前編ー
ep.24 坊っちゃまと花火大会
あ"ーづーい"ー
8月に入り、毎日暑過ぎる。
「鬱陶しい顔すんな」
そして、安定のパワハラも受けております。
えぇ、お相手は一応彼氏です。
ほんとに彼氏だよね?って不安になることもあります。
「お前、暑苦しい」
人として終わってるなって思うこともしばしば。
「私が暑苦しいんじゃなくて、外が暑いんです!!夏なんです!!」
仮にも雇い主様でもあるから、偉そうには言えない。
「…っはは!外が暑いのはわかってるわ。しかも夏ってことも」
俺様でキモ野郎だけど、笑った笑顔で全て許せてしまう恐ろしい人なのです。
「まぁ涼しい家ん中で暑くなるぐらい仕事頑張ってくれてるってことで」
暁斗くんの仕事部屋の本棚を掃除していたら、近づいてきた。
「??」
「この日お前休みな」
暁斗くんがスマホの画面を見せてきた。
「花火大会…?」
「一緒に行ってやる」
いや、その言い方だと私が誘ってお願いしてるみたいやん
「んー、どうしよっかなぁ」
最近の私は俺様暁斗くんへの反撃を覚えてきている。
「あ?どういう意味だよ」
「行くか迷ってます」
嘘だよ!
ほんとは行くの一択だけど!!
誘ってくれて嬉しすぎるんだけど!!
だけどさ、もうちょっと優しく誘ってほしいなぁとか思ったりもするしさ!!
「なら一生行かねぇ」
そう言ってスタスタと私から離れて仕事机の所に戻っていく。
おわー!!そうきたのかぁー!!
「わー!!行く!!行ってくださいー!!!」
私の無駄な反撃は5秒で終わった。
「いおが俺に逆らうなんて無理なんだよ」
意地悪な笑顔でそう言うんだから。
その顔にもドキドキして、かっこいいって思ってしまう私はとてつもないMで病気なんだろう。
ーーーーーーーー
「え!みっちゃんもその花火大会行くの?」
夜、みっちゃんと電話していた。
「うん!彼氏と行くよー!伊織も御曹司くんと行くんだ」
「うん。今日決まったんだけど」
「Wデートしない!?」
「Wデート!?」
みっちゃんからの、いきなりの提案。
「出来るかなぁ…私うまく話せる気がしないし……」
暁斗くんもオッケーしてくれるかな。
「もしよかったらしようよ。私、彼氏に伊織紹介したかったし。いつも話はしてるんだけどね、親友だって」
みっちゃん…
私のこと、親友って言ってくれてるんだ。。
嬉しい。。
「みっちゃんありがとう。暁斗くんにも話してみるね」
次の日、早速暁斗くんに相談。
「は?Wデート?無理」
だよね。
「そうだよね。みっちゃんに言っておくね」
みっちゃんにうまく伝えよう。
私もみっちゃんの彼氏さんとうまく話せる気がしないし(緊張で)
「いおはどうなん?したいのか?」
まさかの暁斗くんからの質問。
どうだろ…
「正直暁斗くんとふたりで行きたいなって思いも強いし…だけど……」
みっちゃん。
「大切な親友と一緒に行きたいって気持ちもあるから…」
いっそ、みっちゃんとふたりもありか?って思ってしまうほど。
「いいよ。Wデートしてやる」
嘘っ!!
「でも、無理はしてほしくなくて…!」
「いおの大事な友達は俺も大事だから」
わぁ……ヤバイ………
「いお?」
俯く私の顔を覗く暁斗くん。
私、絶対顔真っ赤。
それに目も涙でうるっとしてる。
「は?なんで泣きそうなん?」
珍しくちょっと焦ってる暁斗くん。
「今の暁斗くんの言葉が嬉しすぎて…ほんとにありがとう」
暁斗くん。
大好きが溢れてくる。
「ふたりの時間も作れよ」
そう言って私の目元にキスをしてくれた。
「暁斗くん、今仕事中だよ」
「関係ねぇよ。俺がしたくなったらする」
清々しいほどの俺様。
「私もキス…したいんですが……」
そんな俺様暁斗くんが大好きでたまらなくて、ワガママを言ってみる。
「いつでもしろよ。彼女だろ?」
ずきゅーーーんっ!!
なんですか!!その甘々モードは!!
明日は大雨ですか!!??
言ってみたはいいものの…いざするとなると緊張が……
「しねぇのか?」
…っよし!
私は暁斗くんのほっぺにキスをした。
「…これだけ?」
「だけって!?」
「全然足んない」
足りないとはなんですか!?
「…まぁいいや。仕事中だし」
そう言う暁斗くんはご機嫌なのか鼻歌を歌っている。
暁斗くんがわかんない。
私、むっちゃドキドキしたのにー!!