大嫌いな王子様


「あれ?今日は御曹司と一緒に来なかったんだ?」

「うん。だってもう目立つの嫌だもん」


あんなのとずっと一緒とか耐えられない。



「御曹司くんは優聖学園だよね。お金持ちで頭も良い。はぁ〜完璧だわ」


「優聖?どこそれ?」

アイツが完璧?
まさか。



「みっちゃん、夢見過ぎだよ」

「今度、皆実邸遊びに行かせてよ」

「私なんかじゃ決められないよ」


アイツの俺様な所を知れば、その考えはすぐなくなるよ。




優聖学園…

そういえば私、アイツの事何も知らないなぁ。

名前もちゃんと聞いてない。





相変わらず奴の身の回りの仕事と学校の往復で毎日が過ぎていく。



「お姉ちゃん、元気!?会いたいよー!」


夜にお母さんや晴と電話する時間が、癒しの時間。





そう。
このスマホ、アイツあんな偉そうに言いながら渡されてから一度も連絡してきてない。


なんなん。

いや、別にキモ野郎からの連絡なんて待ってないけど!





——————————

「ただいまです」

今日もいつものようにキモ野郎の家に帰る。

そろそろこの生活に慣れてきた今日この頃。



「伊織様、おかえりなさいませ」

「飯田さん、お疲れ様です。あの、ほんとに様付けはやめてください」


「坊っちゃまよりご伝言を預かっておりまして、本日の仕事はお休みとの事です」

「はい?」

「急なお休みだから日給は払いますのでご安心くださいませ」

「いや、そう言う事じゃなくて…」


急に休み?


「あの、アイ…いや坊っちゃまは?」

「本日は帰宅が遅くなると思います」


珍しい。。



「伊織様、こちらを」


飯田さんは1枚の紙を差し出した。


「お母様と晴様が住んでおりますマンションの住所です。お送りしますので、お会いになってはいかがですか?」


え!!

「ほんとですか!?会います会います!!」


「すぐお送りいたします」



飯田さんに送ってもらって着いたのは、アイツの家から車で5分ほどの距離にあるすごく大きなマンション。


「ほぇ〜〜……」

なんだ、このマンションは。


「坊っちゃまのお祖父様が所有されておりますマンションでございます」


次元が違い過ぎて、私は聞き流すことにした。


飯田さんと別れて、インターホンを押す。
これがオートロックって言うものなのね!


「お姉ちゃーん!!」

インターホン越しに晴の声が聞こえて、私は急いでマンションに入り部屋に向かった。




「わーん!やっとお姉ちゃんに会えたよー!!」

「晴〜!!元気にしてた!?」

2週間振りぐらいにやっと会えた。



「伊織、元気そうで本当によかった」

「お母さんも」


嬉しくて感激で涙が出る。



とっても素敵なお部屋で、何故こんな素敵な所に住まわせてくれるのか私はアイツがさらにわからなくなった。



「皆実暁斗さん、とても良い方ね」

「え?アイツが…?」


良い人?
驚き過ぎて、お母さんが入れてくれたジュースを危うく吐き出してしまう所だった。


晴はおもちゃで遊んでいる。
このおもちゃも今まで持っていないもの。


「あれも暁斗さんと飯田さんがくださったの」


そうなんだーー…


「勝手に引越したりして本当にごめんなさい」

「なんでお母さんが謝るの!?あの人らから何か言われた!?」


最大の謎

どうして、私たち家族にこんなにしてくれるのか


やっぱりそれがわからない



「最初は全部断ったわ。引っ越す条件として伊織を住み込みにさせて欲しいって言われたから。それに何より信用出来なかったし…だけど…」


だけど?


「暁斗さんの真剣な気持ちがすごく伝わったから…必ず伊織を幸せにしてくれるって思ったから了承しちゃったの」


え?アイツが私を幸せに?



「え、お母さんアイツとどんな会話して…」


〜♪

今まで聞いたことがない着信音が鳴った。



ディスプレイを見ると

【皆実暁斗】の表示。

アイツの名前だ。



初めての電話に少し戸惑いながらも減給に恐れてすぐに出た。



ツーツー…

だけど切れてしまった。


え!?切る!?
ギリ2コール鳴り終わってなかったよね!?
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