大嫌いな王子様 ー前編ー
4人で出店をまわる。


「たこせん食べたい!」
「伊織、唐揚げも美味しいよー」

私はみっちゃんと食べ歩き状態。




「あーあ、暁兄せっかくの花火デートが俺とのデートになっちゃったね」

「うるせぇよ。いおが楽しいならそれでいい」

「ふーん。そんなもん?」

「俺も楽しいしな。お前楽しくねぇの?」


暁兄も変わったなぁ。

「ぼちぼち楽しい」

「なんだそれ」



外もすっかり暗くなり、あと30分ほどで花火が打ち上がる時間だ。



「ここならまだ見やすいんじゃね?」

「暁斗くん、ありがとう!ここにしよう」


暁斗くんが花火を見やすい場所を探してくれた。




買い込んだジュースやベビーカステラを食べながら、4人で他愛無い話をして花火の時間を待つ。


あと15分ほどで上がる時だった。




私たちの座っている場所の近くを通るカップル。
そのカップルを見て、みっちゃんが

「え……タケシ…!」

と、言った。


タケシ…??
その名前って…


相手の男の人に聞こえたようで、こっちを見る。



「光季(みつき)…」


その男の人がみっちゃんの名前を呼んだ。




「えー?誰ー?知り合い??」

その男の人の隣にいる少しケバい女の子がひょこっとこちらを覗きながら聞いている。



「…あぁ。ただの知り合い」


へ??

この人、タケシさんなんだよね?
今なんて言ったの?
てか、そもそも体調悪いんじゃないの?
なんでここにいるの?
その女の子だれ?


一気に色んな疑問が出てくる。




「…は……なにが知り合いよ。。バカにすんのも大概にしなさいよ!!」

みっちゃんが立ち上がり叫んだ。



「なにこの子〜キレてんだけど〜」

ケバい女の子はみっちゃんが彼女とは気づいていない感じ。



「なにが体調悪いよ…いつも嘘ばっかり…」

みっちゃんが泣いてる。


「はぁー…もうハッキリ言うけどさ、お前ガキ過ぎておもんないんだよね。あと真面目過ぎ?コイツといる方が楽しくていいんだよな」


この人なに言ってんの?
こんなへらへらと。


怒りが込み上げてくる。



「Wデートとかもウザ過ぎだし」


プチンッ



「ちょっと!なんでそんなヒドイことばっかり言えるんですか!?みっちゃんに謝ってください!!」

許せない!!
大事な親友のみっちゃんにこんなヒドイことを…!!


「は?お前だれ?…あー、伊織って奴か?光季からよく聞いてたよ。思ってた通りお前もウザイ感じの奴だな」


なんなのコイツ…
ほんとに信じられない。


「伊織のこと悪く言わないでよ!!」

みっちゃん…



「あのさ」

後ろから少し低めの声がする。


暁斗くんだ。
この声のトーン、だいぶお怒りモード?



「さっきからウダウダうるせぇな。あんたさ、同じ男として吐き気すんだけど」


暁斗くんが立ち上がり、タケシさんに近づく。


「俺がキレる前にどっか消えてくれる?」


結構ヤバイかもしれない。



「は?お前もまだ高校生だよな?こっちはお前らより年上なんだよ。なにを偉そうにー…うっ」

暁斗くんが右手でタケシさんの胸ぐらを掴んだ。


「聞いてなかった?キレる前にって言ったよな?」

そう言いながら、左手の指をパキッと鳴らす。



「暁斗くん、ダメだよ!!」


私が暁斗くんの腕を掴んだ瞬間、ずっと黙っていた和希くんが立ち上がった。
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