大嫌いな王子様 ー前編ー
ep.26 交換条件
楽しかった夏休みもあっという間に終わり、気づけば2学期が始まった。
今日の仕事はお休みをもらってる。
お母さんや晴に会いに行くため。
もうすぐマンションに着くっていう所で、目の前に大きな黒い車が停まった。
「阿部伊織様ですね?」
な、なに!?
車の後部座席の窓が開く。
「久しぶりだね」
出たー!!!
ほんとにお久しぶりの暁おとではないか!!
「お、お久しぶりです…」
「少しいいかな?」
もちろん断れるわけはなく、半強制的に車に乗せられる。
「なにか…ございましたでしょうか?」
緊張がすごい。
手汗も出てくる。
「暁斗はどうやら…きみに本気のようだね」
…それにどう答えたらいいの。。
「暁斗はね優秀で努力家で…我が皆実グループの今後を担っていく存在なんだよ」
はい、重々承知しております。。
「結婚相手なども大切でね…」
きた!
私はぎゅっと手を握りしめる。
「きみは暁斗との将来を考えているのか?」
まさかの質問に目がパチクリとなる。
「えっとそれは…どういう…」
「即答出来ないということは、暁斗との関係は真剣ではないということだね」
なんでそうなる!!
「真剣です!!大好きです!!これからもずっと一緒にいたいです!!」
我ながら…恥ずかしい言葉を大声で、、しかも暁おとに言ってしまった。
「そうか…ところで、ウチを出ていくことはどうなっている?」
そ、そうだよね。。
「申し訳ありません。至急で家を探して出て行きます」
沈黙がしばらく続く。
「暁斗とのことだが…私はやはり反対だ」
ドクンッ
わ。心臓が痛くなった。
「それでも暁斗といたいと言うなら、きみの本気を見せたまえ」
「本気…?」
—————————————
「いお、晴たちとゆっくり過ごせたか?」
「う、うん!遊んだりできたよ。ありがとう」
お風呂から上がって部屋に戻ろうとしたら、暁斗くんに会った。
心臓がドクドクする。
私、ちゃんと普通に話せてるよね?
「…なんかあった?」
ドキーッ!
「なにも!」
「ふーん…」
「じゃ…おやすみ」
ドンッ!
わぁ〜壁ドンだぁ♡
…って思ってる場合じゃない!!
「なんかあったな。正直に言え。でないと、ここで襲うぞ」
この人はほんとにしそうだから怖い。
てか、なんでわかるのー!!
なんか…
なんかいい理由(うそ)を…!!
考えろ、私!!
「えっと…」
「あと5秒」
ひえー!!!!
「4、3、2…」
「わ…私の誕生日って…覚えてる!?」
「…は?」
わー。。よりにもよってなんちゅーことを。。
自分から言うとか、図々し過ぎない?
てか、引くよね。
でも、他に思い浮かばなかったんだもん。
「覚えてるよ。10月2日だろ?」
覚えてくれてた…
やば…すごく嬉しい。
「そんなこと気にしてたんか?」
「う…うん」
正直に言うと全然気にしてなかった。
でも、覚えてくれてたことを知れて嬉しい。
鼻をむにっと摘まれた。
「んぎゃっ」
「あはは!なに変な声出してんだよ」
暁斗くんの笑顔に胸がぎゅーってなる。
「せっかくサプライズ考えてたのにさ。いおのせいで台無し」
私はこの人とこれからも一緒にいたい。
この笑顔をそばで見ていたい。
「暁斗くん、大好き」
伝えたくて仕方がなくなった。
「どうした?急に」
「言いたくなったから」
「…変ないお」
そう言って暁斗くんはキスをしてくれた。
絶対、暁おとに勝ってやる。
受けて立ってやるんだから。