大嫌いな王子様

「ごめん…」


キモ野郎は私の手を引き、倉庫から出てしばらく走った。




いや、もうしんどい…


「タンマ!!」



やっと立ち止まった。


「ぜぇぜぇ…」

「お前運動不足なんじゃね?こんなんで息上がるとか。あと、タンマとか言う奴今もいるんだ」


「はぁ!?」


元はと言えば、あんな地獄絵図からずっと息あがりっぱなしやっちゅうねん!!


コイツ正気か!?



「なんであんなとこいたんだよ」


「わかんない」


「は?わかんないってなんだよ」

「あんたこそ、なんであんな所にいたのよ」


ほら、黙るじゃん。



「胸騒ぎがしたんです」

「…は?」

「あんた…いや、あなたから珍しく着信があったから…。すぐ出たけど切れたし、それから何も連絡ないし」

「連絡?俺した?」


なにーー!?

あれはもしかして間違い電話だったの!?



なんじゃ…それ……



私はその場にへたり込む。



私、何のためにあんな怖い場所に行ったの。。



「ふーん。俺のこと心配してくれたんだ?」


「はい?」


「それで胸騒ぎがして、わざわざ俺を探してくれたんだろ?」


なに、コイツ…
いつにもなくキモイ笑顔をしてる。

いや、正確に言うとかっこいいんだろうけど……

すごく意地悪な笑顔。


私の目には、それが最高にキモく映る。






「さっき、俺の名前呼んだな?」

「え!呼んだっけ!?」


「は?意識なしかよ、うぜー」


無我夢中だったから

どうにか止めたかったから




「ねぇあなた、なんでケンカなんかしてるの?」


「なんでお前に言わないといけねーんだよ」



ダメだ、会話になんない。



なんだか、さっき感じたコイツが遠くに行っちゃうんじゃないかって不安。


初めて出会った時にも見た、あの冷たい表情。


熱を持っていないような。。




「もう…いいです」


諦めよう。
私なんかが、何か出来ることじゃないんだ。




「俺の名前知ってたんだな?」

「へ?はぁ、、まぁ一応は…」

みっちゃんや周りの騒いでた子たちのおかげで、とは言えない。



「今から俺のこと、名前で呼べ」


「は!?なんで!?」


「命令」


「意味わかんないから!」


「時給下げるぞ」


「なっ!!!」



何かあったらすぐ時給を理由にする!!

卑怯過ぎる!!




「お前は俺の言うこと聞いてればいいんだよ」


「はぁ!?あんた何様なの!?」


「あんたじゃない、俺の名前は。はい、減給」



この最強にキモくてウザイ俺様をなんとかしてください。




「はい」

「ハンカチ??」

「ほっぺ、少し切れてますよ」


綺麗な顔に少し傷がついてる。

まぁ、中身はドス黒いけどね。



「サンキュ」

さっき見た冷たい表情はどこへやら。

たまに見る優しい笑顔になった。



ぼそっ「多重人格かコイツ…」


「なんか言ったか?」


「なにもー」



ストレス発散なのか

はたまた、何か理由があるのか


全然わからないけど
早くケンカを辞めさせなきゃ


その方法を考えなきゃ。



「いおー。腹減った」

「え!今から!?」



仕方ない。


「簡単なものでよければ帰ったら作ります」


「炒飯食いたい」


「わかりました。材料見てみます」


「マジかー!やったね」



ほら、またそうやって無邪気に笑う。



わかんない所だらけだ、この“暁斗くん”は。
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