大嫌いな王子様 ー前編ー

ep.4 坊っちゃまとダンスレッスン

キーンコーン…

「あんたさぁ、疲れ過ぎじゃない?」

「ここ最近、毎日家の雑務終わったら夜中1時まで勉強、そして朝5時起き」

「毎日楽しんでるね」

「どこが!!!あんのキモ…!」

いや、、、

「金持ちわがまま坊っちゃんのせいで」


さすがに、外でキモ野郎とは言えない。



元はと言えば……

(回想)

「あ?お前こんなんもわかんねぇの?中学レベルだぞ」

「そんなことないです!!これは高校のハイレベルです!!」

「それでもわかってねぇんだろ?何胸張って言ってんだよ」



仰る通り!!!



キモ野郎の部屋を掃除していた時、アイツのノートが床に落ちていた。


拾った拍子に見えたのは、暗号のような数式。


「すご…」

このひと言が間違いだったんだ。


そこから色んな数式やら英文やら呪文のように言われたが、全く答えられず。


「ウチのメイドのレベルが疑われる。今日から勉強するぞ」


「えぇ!?」


(回想終了)



「私…一応奨学金もらってるんだけどな……」

アイツが頭良過ぎるんだよ。



「いいじゃん♪御曹司くんに勉強教えてもらってんでしょ?それ周りにバレたら、あんた集中攻撃されるよ」


「えぇ!?そうなの!?」


なんで!?
みんなしたいなら、いつでも代わりますよ!?



無職になりかけてからもうすぐ1ヶ月。
なんだか怒涛過ぎて、未だに思考が追いつかない。
このなんともいえない、現実離れした生活に。




「ねぇ、あれって皆実グループの…」

「暁斗様よー!!」


教室の窓際で女子たちが叫んでいる。


「なんだよ、あんな奴に騒いじゃってさ」

男子はぶーぶーふてくされている。



って!!

「そんなことどうでもいいー!!!!」

今、皆実って言った!?
暁斗って言った!?


キモ野郎の名前じゃん!!


ここ、私の高校だよね!?
なんでアイツの名前が聞こえるの!?



「いや、あんた声大きいわ」

みっちゃんがいつもツッこんでくれるから、私の発言は成り立っている。





ガラッ!!


わぁ〜、なんだかものすご〜く嫌な予感がする。


当たりそうだなぁ。この予感。


私はドアに背を向けているが、ひしひしと伝わる威圧感。



「きゃー!ウチのクラスに暁斗様が来ているわよー!!」


女子たちは大騒ぎ。



はぁぁーー…やっぱり


私はまだ背を向けたまま。



ダンッ!


机に何か乗せられ、そこそこ大きな音がした。

チラッと視線を落とすと、鞄だった。


「おい、こっち向け」


「どっどちら様でしょうか?」


「しばくぞ」



グイッと顎を引っ張られ、無理矢理キモ野郎の方に向かせられた。



「幼稚園で習わなかったか?人と話す時は目を見ろって」


こ、こいつ〜!!



「えー!!暁斗様に顎クイとかされてるー!!」

「なんで阿部さんだけー!!??」


あー、うるさい。
代わってあげますよ、今すぐに。




「なんの…ご用でしょうか?」


「5秒で荷物まとめろ」


「はぁ!?」


また意味わかんないことを。


「いや、まだ授業あるんだけど」

「校長に話つけてあるから。早くしろ。トロイ」



おい!あたしの人権は無しかよ!?
金持ちの特権振りかざしてさ!!!



私は渋々荷物をまとめる。

教室は騒然としている。


「出来ました…ってうわ!」

「行くぞ」


私の腕を引っ張りながら、みっちゃんに話しかけるキモ野郎。

「あんた、いおの友達?」

「はい!そうです!」

みっちゃん、すごく嬉しそうだな。


「担任に言っといて。いおは皆実暁斗とデートに行ったって♪」


そう言って、キモ野郎は私を連れて教室をあとにした。


はぁぁぁ!!??

デーートーー!!??


教室の中は、女子の叫ぶ声が蔓延している。



「飯田さん!!」

「坊っちゃまが強引で申し訳ございません」

教室の外を出ると、飯田さんが待っていた。



「あ?ひと言余計なんだよ、飯田」

「失礼いたしました」


謝りながら、なんだか嬉しそうに微笑んでいる飯田さん。

なんで??



「とっとと歩け!ノロマ」


いや、たまらんぐらいウザ過ぎる!!
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