大嫌いな王子様 ー前編ー

女子生徒の子に更衣室を案内してもらい、急いで着替えて戻ってきた。


「遅い」


返事するとイラつくから無視することにした。


「ほぉ〜…無視ねぇ」



ガシッ!

両腕を掴まれた。



「お前が俺を無視なんて100万年はえんだよ」

そう言って、キモ野郎はステップ?らしきものをとりだし、ダンスを始めた。


「ひゃっ!ちょっ…待って!」

「違う、次は右足。2歩下がれ…お前聞いてんのか!?」


うわーーん

足がもつれるし、何が何だか意味がわかんないよー!



「ダンス初めてか?」

「当たり前でしょ!」

貧乏で習い事なんかやったことないのに。

そもそも、こんな社交ダンス的なものやったことある人の方が少ないでしょ。



「悪かった。もう一度初めからゆっくりやろう」

キモ野郎が優しく手を差し伸べてくれる。



あ、勘違いしちゃいそう。
優しい奴なんだって。



「だから違う!ワン、ツー、スリーで右足を下げるんだよ。違う、もう一回!」


「もっと優しく教えてください〜〜」 



クスクス…
「あら〜暁斗ったら本気なのね♪面白そうだわ♡」




————————————

バタンッ


更衣室のロッカーを閉めて、とりあえず現実逃避。

「はぁーー…」

まだ授業があったのに無理矢理、ほぼ誘拐に近く連れてこられて、なにこのスパルタレッスン。




「ちょっと」

ひとり項垂れている私の所に女子3人がやってきた。


あ、この人確か優子って呼ばれてた…

「あなた暁斗さんのなんなの?」


「はい…?」

「どうやってたぶらかしたの?」


何を言ってんの、この人



「こんな品のない奴、きっとお金を詰んだのよ」

「凡人以下のくせして」


この優子って人の取り巻き?的な2人、むっちゃムカつくなぁ。

そもそも、お金とかないし。


言わせておけば好き勝手…!

「あのね〜…」



コンコンッ

「俺のさっきの忠告聞いてなかったの?」


ドアの所を見ると

「キモ野郎…!」

「あ?今なんつった?」


ヤバイ!!驚いて、つい口に出しちゃった!!



てか、ここ女子更衣室だよ!?
なんでドア開けて、普通にいんの!?



「言ったよな?俺許さねぇって」

ジリジリと近づいてくるキモ野郎。



「金澤、悪いけど俺はお前と組まない。わかってくれ」


「あ…暁斗さんのバカ!!」

優子さん?たち3人は更衣室から出ていった。



とりあえずホッ…じゃない!!



「おい、さっきの“キモ野郎”ってなんだ?」


ひぇ〜!
やっぱり聞こえてたよね〜!

「まさか俺のことじゃねぇよな?」


すごいっ!正解ですっ!!

とは言えない!!


「いや〜ひとり言って言うか〜…」

私は明後日の方向に目線をやる。




チッ

キモ野郎は舌打ちをした。



ガシッ

キモ野郎は私の鞄を持って


「ほら、行くぞ。いお」

優しく私の名前を呼んだ。



絶対怒られると思ったのに。
私は拍子抜け。


「はっはい」


更衣室のベンチに座っていた私は急いで立ち上がった。




「俺の名前はキモ野郎じゃねぇよ。暁斗だ」


なによ、急に。


わかってるよ、それぐらい。



「知ってるよ」

私はぼそっと答えた。



「ならよかった」


だから、どうしてそんな風に微笑むの!?


キモ野郎から暁斗くんへ、呼び名レベルが3だけ上がった。(MAX100レベルの内、0→3)
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