大嫌いな王子様
お屋敷に着いてから、暁斗くんはすぐに仕事部屋へ向かった。


「飯田さん、何をお手伝いすれば…?」

「明日に向けて、練習をしませんか?」

「いいんですか!?」

「もちろんでございます」


明日のレッスンになんとか間に合わせるんだ!!




練習をしだして4時間ほど経った頃。

私は魂が抜けながら、練習に励んでいた。



「伊織様、牧からの連絡で夕食の準備が出来たとのことです」

時計をチラッと見る。
もう20時なんだ。



「もう少しだけ練習したら行きます」

「承知しました」


「あっ!飯田さん!練習のことは暁斗くんにはー…」

「もちろん秘密にするよう牧にも伝えていますので、ご安心くださいませ」


さすが、飯田さん。


「私ひとりで練習するので飯田さん、ご飯食べてきてください」

「私はいつももっと遅いので大丈夫です」



苦手なステップ。。
絶対覚えなきゃ。




——————————

ガチャ

「伊織様、お飲み物を…」


お飲み物をお持ちすると、伊織様は眠ってしまっていた。

お疲れですよね。
時間も23時を回ろうとしている。


暁斗坊っちゃまのために、こんなに頑張ってくださるなんて。


私は伊織様を抱え、お部屋までお運びすることにした。




「おい…」


しまった。


「なにしてんの?」


坊っちゃまに会ってしまった。



「コイツに無理させるなって言ったよな?なんで寝てんの?なんでお前が抱えてんの?」


坊っちゃま…質問が多いです。


「申し訳ございません。伊織様が寝てしまわれましたので、お部屋までお運びしようかと思いまして」



グイッ


「俺が運ぶ。お前はもう休め」


そう言って、坊っちゃまは伊織様を抱えながらお部屋へ向かった。


もっと怒られるかと思った。
詳しく聞かれるかと思った。



坊っちゃま、人のことばかり優先しなくて大丈夫なのですよ。




ポスッ

いおをベッドに寝かせる。


何してたんだよ、晩飯にも来ないし。



サラッ…
いおの髪に触れる。


優しくしたいのに
笑ってほしいのに
どうしたらいいのかわからない。


父さんに認めてもらわねぇとー…


コイツには関係ないのに、ほんと巻き込んでるよな。
いおの言う通りだ。


解放してやらなきゃいけないんだよな…。



「うぅ…」

ん?起きるか?



「キ…モ野郎。。ウザ…イ」


前言撤回。
マジで気ぃ悪い寝言だな。


部屋を出ようとした時


「暁斗…くん、美味しい?」


「…バーカ」


それでも、そばにいて欲しいって思ってしまうんだ。
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