大嫌いな王子様

家での夜の練習も再開。

ダンスパーティーまであと3日に迫った金曜日の夜。


少しずつ暁斗くんのステップにも付いていけるようになってきた。



「もう終わりにするか」

「暁斗くんはもう寝てください。明日土曜日で学校休みだから、私はもう少し練習します」

「もう休め」

「嫌です」

「じゃあ俺もする」


もう…!!

「暁斗くん…ひゃっ!」


振り向くと、暁斗くんがすぐそばにいて驚いてしまった。



「なんでそこまでやってくれんの?」


な、なんちゅーど直球な質問。


「ダンス…うまくなりたいし?」

自分でも今の気持ちをうまく言葉には出来ない。

もしかしたら、暁斗くんもそうなのかな?
少しだけ暁斗くんの気持ちがわかったような気がした。



「そんなにダンスに興味があったのか」


まさか。
まぁ、納得してくれたならいっか。



「飯田と練習してた?」


ドキーッ!


「えっ?なんのことでしょう?」


「俺に秘密とか出来ると思ってんの?」


あっ、悪魔モードだ。

最近、暁斗くんに天使モードと悪魔モードがあることがわかってきた。

あ、あとキモ野郎モードも。

今は悪魔モードとキモ野郎モードの狭間かな!?
なんて、呑気に考えてる私もどうかしてる。


ジリジリと私に近づき、床に座っていた私は後ろに後退りする。


トンッ

壁にぶつかってしまった。



バンッ

暁斗くんが壁に手をつく。


わぁ〜、これが噂の壁ドンかな?
私が壁ドンされる日がくるなんて夢のよう…なんて考えながら、なんとか現実逃避をする。


「お…怒ってるんですか?」

「別に」


ほんとに?

「怒ってる顔してる…」


「怒ってない。ただ、俺にはもう秘密とか無しにしろ」

悪魔+俺様モード。
最強コンビネーションを使い出した。


「私だって…秘密の1つや2つぐらいありますから」


むにっ
両頬を片手で挟まれ、顔を上に向けられる。

嫌でも暁斗くんと目が合ってしまう。



「じゃあ今すぐ全部言え」


はぁ?なに言ってんの?


「言えないから秘密なんでしょ」

「俺には無しだ」


なによ、その自分勝手


「じゃあ…なんでケンカしてるのか教えてください」


暁斗くんの表情が変わった。
空気もピリッとした気がする。

私…ダメなこと聞いちゃったよね。。

でも、私ばっかり嫌なんだもん。


暁斗くんのこと、もっと知りたいのに



え…
なにこの気持ち……

今の自分の気持ちに戸惑ってしまう。



「もういい」

またはぐらかす。
背を向けて部屋を出ようとする暁斗くん。



「待ってー!!」

急いで駆け寄り、腕を引っ張る。


「ダンスの練習やりましょう!3日後だよ本番は!」

「いお…」

「優勝して…賞品もらいましょう!」

「ん…?お前、そんなに優勝賞品欲しいの?」


優勝賞品なんて、全く知らない。
というか興味ない。

だけどなんとか引き止めなきゃ。



「優勝目指してたとはなぁ〜。よし、朝までやるか」


朝!?

「それは嫌〜!!!」


暁斗くんを知っていくたび、暁斗くんの知らない部分がたくさん見えてくる。


なにを考えてるんだろう。
なにも教えてくれないからわからない。


せめて、このダンスパーティーをきっかけになにか知れたら嬉しいな。
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