大嫌いな王子様
お屋敷に戻ってから、牧さんが部屋にやってきた。

「伊織さん、こちらのドレスをどうぞ」

「え…」


黄色いドレス。
キラキラのビジューもついていて、とっても綺麗。


「これ、私が着ていいんですか?」

「もちろんでございます。坊っちゃまが伊織さんのために選ばれましたよ」


暁斗くんが…


「さぁ!早速着替えましょう!メイクもしなければなので、担当の者をお呼びします」

「た、担当!?」



ドアを開けて、3人の女性が入ってきた。

「伊織様、宜しくお願いいたします」

「この3人が伊織様をさらにお美しくさせていただきます」


お金持ちってやっぱりすごい。。



ヘアセットにメイク
いつもスッピンだから、メイクなんて恥ずかしくなってしまう。


「とてもお似合いですよ」

そんな私の不安に気づいてくれたのか、メイクさんが鏡越しにそう言って微笑んでくれた。


「…ありがとうございます///」

メイクさんがとっても美人で照れてしまう。



そして、生まれて初めてのドレス。


「わぁ…」

鏡で見て思わず声が出た。


これが私!?


「とってもお美しくございます。坊っちゃまのところへ行きましょうか」

「は、はい…」


ドキドキする。
アイツは…暁斗くんはこの姿を見て何か言ってくれるかな。





ガチャッー…
牧さんがダイニングのドアを開ける。


「坊っちゃま、お待たせいたしました」


牧さんとメイクさんの後ろから、ひょこっと覗く私。


「……いや、見えねぇんだけど」

「伊織さん!前へ!」


えー!だって恥ずかしいし!



恐る恐る前に出た。


おわっ!
グレーのスーツ姿の暁斗くん。
これまた王子様のようにかっこいい。

私!見惚れちゃダメだ!




「…………」


なにも言わない暁斗くん。
え!!
やっぱり変!?
おかしいよね!私がこんな格好してメイクまでして!!


「着替える…」

私はくるっと後ろを向いた。



「待てって!」


私はそーっと振り返る。



「え…」

そこには顔を真っ赤にした暁斗くんが。



「バカ、こっち向くな!」

「だって待てって言ったじゃないですか」

「あ〜〜うぜぇ」


なんだと!?
やっぱり変なの!?





ガタッ

「来い」

私の手を引き、車へ向かう暁斗くん。
後ろから見てもわかるぐらい、耳まで真っ赤。

ねぇ、どうしてそんなに真っ赤なの?
こっち向いてよ。

胸がぎゅーってなる。

この意味もわからない。



「坊っちゃま、伊織さん行ってらっしゃいませ。楽しんできてくださいね」

「はい!!」


牧さんたちに見送られて、私たちはダンスパーティーへ向けて出発した。
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