大嫌いな王子様 ー前編ー
まず1曲目。
全員、音楽に合わせて自由に踊る。
そこから一気にふるいにかけられ、第二ステージにいけるのはおよそ半分。
あ、ステップ間違えた
ヤバイ
「大丈夫」
踊りながら、ぼそっと優しく囁いてくれる。
ニコッと微笑む顔を見たら、なんでもやれる気になってしまう。
危険な人だ、暁斗くんは。
♪〜...
なんとか1曲目が終了。
あー、ヤバイ。
もうすでに足折れそう。
「おい」
「何ですか?」
「休憩中の仕草とかも審査に入るんだぞ。そんなブッサイクな顔すんな」
なんですと、、、
ブ、ブサイク、、、
いやね、そりゃわかってますよ?
平均以下の凡人以下の顔だってことぐらいは。
でもさ、仮にも今一緒に踊った相手で、数分前に【綺麗】とか言ってなかった!?
「やっぱあんたはキモ野郎の最低悪魔だ」
「あ?ぶつぶつうるせーぞ。早くそのブサイク直せ」
決めた!!
私、明日眼科行く!!
絶対行く!!!
たまにかっこよく見えて、そしてドキドキしてしてしまう私に問題があるんだ!!
まずは目から治療しなくちゃ!!!
私はじーっとキモ野郎を睨む。
「結果出るぞ」
そんな私は普通に無視される。
私たちの番号は6番。
ドキドキ…
お願い。。。
モニターに映し出された番号の中に、6番があった。
「わぁー!!やった!!6番ありましたよー!!」
私は嬉しさのあまり、キモ野郎に抱きついてしまった。
「おわーー!!ごめんなさい!!嬉しくてつい!」
なんちゅーことをしてるんだ、私!
ぎゅっ
「え、なんで離れんの?」
今度はキモ野郎が抱きついてきた。
「ちょっ!暁斗くん!?」
「その表情(かお)の方が俺は好きだけど」
好き!?
今、好きって言った!?
自分の顔が一気に赤くなるのがわかる。
ダメよ、伊織。
鵜呑みにしちゃ。
コイツは多重人格。
この言葉にも行動にも、なにも感情はないのよ。
それに、数分前に眼科に行くって決意したとこじゃない。
「お前、なにさっきからぶつぶつ言ってんだ?」
私は念仏を唱えるように、自分に言い聞かせた。
意味わかんない、キモ野郎の行動が!!
「あの女、優子様の目の前で暁斗様とあんなことを…」
「いいのよ。放っておきなさい」
金澤さんたちに見られていたなんて、知る由もなく。