大嫌いな王子様 ー前編ー
寒くて息が白くなる。
「あれ見て」
「え?」
チラッと斜め下を見ると
「わぁ…綺麗」
下の広場にある大きなクリスマスツリーがライトアップされていた。
さすがお金持ち学校!
「ここ、穴場でさ」
「毎年…ここで見てるんですか?」
「うん」
「そっか…」
誰と…?
なんて愚問だな。
そんな考えが出てくる自分にも動揺してしまう。
「ここを教えたのは、いおが初めて」
え、そうなの?
どういうつもりでそんなことを言っているのか。
期待しちゃダメ。
「暁斗くん、1位になれなくてごめんなさい」
私の努力不足で。
「なんでいおが謝るんだよ。そんなに1位のフランス旅行が欲しかった?」
「賞品ってフランス旅行だったの…?」
今、賞品知った。
お金持ち学校は次元が違い過ぎて、やっぱりついていけない。
「あはは!やっぱ知らなかったか。いおらしい」
優しかったり、俺様だったり、キモ野郎だったり忙しい暁斗くん。
「俺と踊ってくれてありがとう。楽しかったし嬉しかったんだけど?」
外の冷たい空気のせいか、暁斗くんの言葉が全部暖かく感じる。
うん、寒さのせいだ。
「いおは?」
「すごく…楽しかったです」
「ならよかった」
寒さで麻痺してるんだ。
このドキドキも麻痺してるせい。
羽織っているジャケットをきゅっと握る。
暁おとに責められない?
私のことで怒られない?
私ってただただ、重荷なんじゃないかな。
ただ少しでも役に立ちたかった。
あなたの気持ちに応えたくて
ポロッー…
あ、絶対泣いちゃダメなのに涙が出る。
「どうした?」
「別に。なんもないです」
パッと後ろを向く。
「は?なんもないならこっち向け」
ブンブンと首を横に振る。
「言うこと聞け」
出てきました、俺様モード。
「いお」
これ以上心配や負担をかけたくない。
自分が悪いのに泣くとか最悪だし。
ぎゅう
後ろからあったかい体温が伝わる。
私、また抱きしめられている。
「ひとりで泣くな」
今、抱きしめるなんて卑怯だ。
そっちに向きたくなる。
私は暁斗くんの手を解き、ゆっくりと体を向ける。
「やっぱ泣いてる」
「役に立ちたかったから…こんなにもしてもらって…」
「…なんか飯田に聞いたか?」
私は急いで首を横に振る。
飯田さんに迷惑かけたくない。
飯田さんは私のために話してくれたんだから。
「役に立ちたいねぇ〜…」
私の涙を指で拭いながら、優しく微笑む。
「なら、これからも俺のそばにいろ」
「それは役に立つとは違うー…!」
「それが俺にとっての【役に立つ】なんだよ」
めちゃくちゃな…
「どうなんだよ?そばにいれるの?」
そして考える時間をくれない。
相変わらずの俺様。
【そばにいる】
暁斗くんが言っているこの言葉の“真意”はわからない。
身の回りの掃除役が欲しいんだろうし
もしかしたら…私には何かしらのお得満点なことがあるのかもしれない(この可能性はほぼゼロに近いが)
だけど、そんなこと全部差っ引いて私の気持ちは
「いてあげます」
これが私の精一杯の抵抗。
「へぇ〜えらくなったね♪伊織チャン?」
珍しく“伊織”と呼ぶその声にすら、ドキッとしてしまう。
あぁ、私重症だ。
一刻も早く病院に行かなければ。
眼科に耳鼻科に内科だな。
あ、脳外科も行ってる方が良さそう。
ほぼ全身やん。
「いお、目瞑って」
「??」
言われるがまま目を閉じると、耳に触れる手にピクッとなった。
なっなに!?
シャラン……
小さな音がする。
「もういいよ」
そっと目を開き、耳に触れる。
これは…
「イヤリング?」
「そ。今日のお礼」
「え!?お礼って…私ドレスも靴ももらってばかりで…!」
だいたい、引越しや住み込みや…お礼をしないといけないのは私なのに
「あー、うるせぇ。クリスマスプレゼントだよ」
「…プレゼント…?」
「言わせんな、バーカ」
ヤバイ…。嬉し過ぎる。
「お、ツリーのライト変わったぞ」
あ、暁斗くん照れてる。
暗くてもわかる。
ツリーの光や街灯で見える、赤くなってる暁斗くんの顔。
この人は魔性だ。
引っかかっちゃいけない、これ以上踏み込んじゃいけないって頭と体が言ってる。
だけど、わかってるのにもう一歩だけって進んでしまうんだ。
「こんな幸せなクリスマスイヴ、初めてです」
早くイヤリングの柄が見たい。
「暁斗くん、ありがとう」
暁斗くんがゆっくり私に近づく。
「ドレス姿、1番綺麗だった」
そう言って、私の頬にキスをした。
「あれ見て」
「え?」
チラッと斜め下を見ると
「わぁ…綺麗」
下の広場にある大きなクリスマスツリーがライトアップされていた。
さすがお金持ち学校!
「ここ、穴場でさ」
「毎年…ここで見てるんですか?」
「うん」
「そっか…」
誰と…?
なんて愚問だな。
そんな考えが出てくる自分にも動揺してしまう。
「ここを教えたのは、いおが初めて」
え、そうなの?
どういうつもりでそんなことを言っているのか。
期待しちゃダメ。
「暁斗くん、1位になれなくてごめんなさい」
私の努力不足で。
「なんでいおが謝るんだよ。そんなに1位のフランス旅行が欲しかった?」
「賞品ってフランス旅行だったの…?」
今、賞品知った。
お金持ち学校は次元が違い過ぎて、やっぱりついていけない。
「あはは!やっぱ知らなかったか。いおらしい」
優しかったり、俺様だったり、キモ野郎だったり忙しい暁斗くん。
「俺と踊ってくれてありがとう。楽しかったし嬉しかったんだけど?」
外の冷たい空気のせいか、暁斗くんの言葉が全部暖かく感じる。
うん、寒さのせいだ。
「いおは?」
「すごく…楽しかったです」
「ならよかった」
寒さで麻痺してるんだ。
このドキドキも麻痺してるせい。
羽織っているジャケットをきゅっと握る。
暁おとに責められない?
私のことで怒られない?
私ってただただ、重荷なんじゃないかな。
ただ少しでも役に立ちたかった。
あなたの気持ちに応えたくて
ポロッー…
あ、絶対泣いちゃダメなのに涙が出る。
「どうした?」
「別に。なんもないです」
パッと後ろを向く。
「は?なんもないならこっち向け」
ブンブンと首を横に振る。
「言うこと聞け」
出てきました、俺様モード。
「いお」
これ以上心配や負担をかけたくない。
自分が悪いのに泣くとか最悪だし。
ぎゅう
後ろからあったかい体温が伝わる。
私、また抱きしめられている。
「ひとりで泣くな」
今、抱きしめるなんて卑怯だ。
そっちに向きたくなる。
私は暁斗くんの手を解き、ゆっくりと体を向ける。
「やっぱ泣いてる」
「役に立ちたかったから…こんなにもしてもらって…」
「…なんか飯田に聞いたか?」
私は急いで首を横に振る。
飯田さんに迷惑かけたくない。
飯田さんは私のために話してくれたんだから。
「役に立ちたいねぇ〜…」
私の涙を指で拭いながら、優しく微笑む。
「なら、これからも俺のそばにいろ」
「それは役に立つとは違うー…!」
「それが俺にとっての【役に立つ】なんだよ」
めちゃくちゃな…
「どうなんだよ?そばにいれるの?」
そして考える時間をくれない。
相変わらずの俺様。
【そばにいる】
暁斗くんが言っているこの言葉の“真意”はわからない。
身の回りの掃除役が欲しいんだろうし
もしかしたら…私には何かしらのお得満点なことがあるのかもしれない(この可能性はほぼゼロに近いが)
だけど、そんなこと全部差っ引いて私の気持ちは
「いてあげます」
これが私の精一杯の抵抗。
「へぇ〜えらくなったね♪伊織チャン?」
珍しく“伊織”と呼ぶその声にすら、ドキッとしてしまう。
あぁ、私重症だ。
一刻も早く病院に行かなければ。
眼科に耳鼻科に内科だな。
あ、脳外科も行ってる方が良さそう。
ほぼ全身やん。
「いお、目瞑って」
「??」
言われるがまま目を閉じると、耳に触れる手にピクッとなった。
なっなに!?
シャラン……
小さな音がする。
「もういいよ」
そっと目を開き、耳に触れる。
これは…
「イヤリング?」
「そ。今日のお礼」
「え!?お礼って…私ドレスも靴ももらってばかりで…!」
だいたい、引越しや住み込みや…お礼をしないといけないのは私なのに
「あー、うるせぇ。クリスマスプレゼントだよ」
「…プレゼント…?」
「言わせんな、バーカ」
ヤバイ…。嬉し過ぎる。
「お、ツリーのライト変わったぞ」
あ、暁斗くん照れてる。
暗くてもわかる。
ツリーの光や街灯で見える、赤くなってる暁斗くんの顔。
この人は魔性だ。
引っかかっちゃいけない、これ以上踏み込んじゃいけないって頭と体が言ってる。
だけど、わかってるのにもう一歩だけって進んでしまうんだ。
「こんな幸せなクリスマスイヴ、初めてです」
早くイヤリングの柄が見たい。
「暁斗くん、ありがとう」
暁斗くんがゆっくり私に近づく。
「ドレス姿、1番綺麗だった」
そう言って、私の頬にキスをした。