大嫌いな王子様 ー前編ー
extra ep. 坊っちゃまのドレス選び
「坊っちゃま、こちらはいかがでしょう?最新作をお持ちいたしました」
ドレスを数十着、家まで持ってきてもらった。
「そうだな…」
なんだかピンとこない。
「こちらはマーメイド型で、今とても人気でございます」
アイツのイメージじゃない。
もっと明るくて可愛らしいものが…
「こちらは?」
「いや、他の物を」
「ではこちらはいかがでしょうか?」
「違うな」
あっという間に2時間ほど、経っていたらしい。
「坊っちゃま、先方も次の仕事がありますので」
飯田の言葉でハッとする。
「あぁ、悪かった」
「いえ!滅相もございません!」
もう、今日決めるのは諦めるか。。
ん?
「これは?」
置いていたパンフレットに写っている黄色のドレス。
「こちらは来月から発売予定のドレスでございます」
これが良い。
「来月か…来週に1着用意できるか?」
「坊っちゃま、来月とのことですから」
「金ならいくらでも出す。頼む、お願いできないか?」
俺は頭を下げた。
部屋の中が騒つく。
「坊っちゃま…」
「頭を上げてください、暁斗様!!必ず準備させていただきます!!」
「ありがとう。感謝します」
黄色でビジューがついた、柔らかく華やかなドレス。
俺の中でのいおのイメージにピッタリだった。
「あ、靴も選ばないと…」
クスッ
「なに笑ってんだ飯田」
「いいえ、なにも」
飯田は、多く言わねぇがいつも見透かされてる気がする。
「うぜぇ、笑うな」
「失礼いたしました」
靴、アイツのサイズ何センチだ?
「黄色いドレス、伊織様にピッタリでございますね」
パンフレットで靴を選んでると、飯田が喋りだした。
「あー…そうか?」
なんかわかんねぇけど、恥ずかしくなって誤魔化した。
「明るい太陽の色ですね」
なんだよ、はっきり言えよな。
「…そうだな。その太陽に向かってまっすぐ伸びるひまわりにも見えるけど」
「坊っちゃま、私はドレスの色のお話をしていたのですが」
「バッ…!わかってるよ!俺だってそうだ!」
そこから坊っちゃまが靴を選ぶのにさらに1時間かけたことも、伊織様には秘密ですね。