大嫌いな王子様

またまたやってきた、昨日のお屋敷。

そして、“坊ちゃま”と言われてる大バカ金持ちケンカ野郎の部屋に連れてこられた。


そして目の前には、大バカ金持ちケンカ野郎。
んー、この名前長くて言いにくいな。



私は床にしゃがみ込む。

スーツの人たちは一礼をして部屋を出て行った。
っていうか、コイツはそんなに偉いの!?





「よぉ。阿部伊織さん?」


「な…なんですか?」


まさか…昨日私が大バカケンカ野郎って言った事を怒ってんのかな!?

やっぱそうだよね!?


私も、前の人たちみたいに殴られるの…!?



大バカ金持ちケンカ野郎が私に近づく。
身長…180ぐらいある?
背が高くて、より怖く感じる。


私はぎゅっと目を閉じる。




「あんた、合格」


へ…?

私はゆっくりを目を開いた。


目の前に、私の目線に合わせるようにしゃがんだ大バカ金持ちケンカ野郎がいた。



よく見ると、すごく綺麗な顔をしていて不覚にも一瞬見惚れてしまった。



「何が…合格ですか?」


「あ?昨日の面接に決まってるだろ」


あっ、そうですよね。

言い方がいちいちムカつくな。



「でも…私高校せ…」


「阿部伊織16歳、相川高校1年B組出席番号1番。住所はーーー……」 


はい……??


1枚の紙を見ながら、ペラペラと私の個人情報を暴露していく。


「家族構成は病弱な母親と小学2年生の弟が1人。家計は相当苦しい模様」


「なんじゃいそれ!!」


勢いの余り、言葉遣いが悪くなってしまった。



「あんたの事調べるの一瞬過ぎて、飯田が焦ってたぞ。学校終わりも、行動範囲が家とバイトのみらしいな」


「そっそれが!?」


「そのバイト先も今日で閉まると…だからここを受けたのか」



全部バレてる…


カネモチコワイ。



「同情とかだったら…いりません」


本当はしがみついて、働きたい。

だけど私にだって…


「私にだってプライドがあります…!あんな風にバカにされてまで働こうと思いません」



あぁ、バカだ私。

お母さん…晴…

こんなバカな娘で、姉でごめんなさい……



「あ?あんたのプライドとかどうでもいいんだよ」


ほら、また見下し始めた。



「俺が合格と言ったら合格だ。今日、今から働け」

「は?嫌です!!絶対嫌です!!!!」



コンコンコンッ


「入れ」


いちいち偉そうだな!コイツ!!


飯田さん?がやってきた。


「坊ちゃま、無事完了いたしました」

「おーサンキュー。ちょうど良いタイミングだな」

「ありがとうございます。失礼いたします」



??なんだ??




「これ見ろ」

飯田さんがさっき渡していた写真を見せられた。


「!?お母さん!?晴!?」


満面の笑顔のお母さんと晴の写真。

ただ背景が…見た事ない部屋…??



「さっき無事引っ越しが完了して、今日からそこに住んでもらってる」


「へぇー、そうなんですね。すごく綺麗な感じのお家……っては!!?」


今なんて!!??


「引っ越し!?住んでる!?」


どういう事!?



「俺が引っ越しさせた。ここから近いウチが持ってるマンションだ」



え…マンションを持ってるって………


ダメだ…次元が違い過ぎて話についていけない。。。



「引っ越し費用諸々、立て替えといたぞ」

「そんなの頼んでない!!」



何がしたいの、コイツ!!



「辞めるなら辞めていいぞ?その代わり、弟たちも路頭に迷うよな。アパートも引き払ったしな」



「私を…脅してるの?」


コイツ…やっぱり最低だ……!

そりゃ、あんなケンカしてるぐらいだもんな……



「脅してなんかないさ。ここで、俺のそばで働けって言ってんだよ」

私の顎をグイッと持ち上げる。



ムカつく…!!


「なに泣いてんの?慰めてあげよっか…?」


どこまでも最低。



こうなったら……


「働いてやるわよ!!家中ピカピカにするんだから!!」


私にとっては決め台詞のつもりだった。



「…ぶはっ!!!」


大バカ金持ちケンカ野郎が笑ってる。

初めて見た笑顔。


私はまたその顔に、一瞬今の出来事を忘れ見惚れてしまった。


ブンブンブンッ

現実に戻る為、頭を横に振る。




「お前やっぱおもろいな…頼むよ、ピカピカにしてくれ」


ズルい奴。
笑いながら私を見る目がさっきまでと違って優しくて、強気のままでいれなくなる。




「あっそうだ、忘れてた」

また近づいてくる。



「この前見た事、他の奴に絶対言うなよ」


この前…?


はっ!!

「ケンカの事!?」


「喋ったらクビだ」


はぁ!?
どこまで上からなの!?




「クビにしたら喋ってやる…!」


「あ?誰に向かって言ってんの?」



あぁ、心の底からムカつく!!



「あんたなんか大っ嫌い!!」



大バカ金持ちケンカキモ野郎ー!!!!


名前が長過ぎるんだよーー!!!!!!
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