大嫌いな王子様

「自分の分はちゃんと払います!」
「いらねー」

時刻は18時を回ったところ。
外はもう真っ暗。

いつのまにか終わらせていたパンケーキ代のお会計。

こんなにお世話になって、ご馳走になんてなれない!


「受け取ってください」

「しばくぞ」


返し、おかしいやろ。
聖なるクリスマスの日にこんな会話してるのって、きっと私たちぐらいやん。





デパートの前を通る。

憧れのデパート。
やっぱりキラキラしてるなぁ。



視線を感じて左上を見ると、暁斗くんと目が合った。


「中、入るか」

「いや、大丈夫です」


「行くぞ」

ズカズカと中へ進んでいく暁斗くん。



デパートの中に入ると、想像以上のキラキラパワーで目がチカッとした。


1階は化粧品売り場なのか、お化粧品の匂いがすごい。
それに綺麗な店員さんがたくさんで、女の子のお客さんやカップルがいっぱい。


わぁぁ!!
これ、容器まで可愛い。


私は初めてのデパートの化粧品売り場にテンションが上がりっぱなし。



クスッ

隣から笑う声が聞こえた。



「楽しそうでよかった」

ニコッと笑う顔に思わず照れてしまう。


「あ、私ばかり…ごめんなさい」

「は?なんで謝ってんの」



んー、なんだこれ?香水?
開け方わかんね

なんて、ブツブツひとり言を言ってる暁斗くん。


デートみたいだなぁ。




あ、この漫画とかで出てきそうな、お姫様がもつようなキラキラした可愛いケースに入った化粧品。
アイシャドウ…

あ、みっちゃんがこの前言ってた。
目元にする化粧だな。



このケース、色も可愛いなぁ。
私なんかには似合わないし、勿体なさ過ぎる。



「暁斗くん、2階に行ってもいいですか?」

「どーぞ」


いつもより優しさが多めの暁斗くん。
今の所、キモ野郎モードには入っていない。



エスカレーターで2階に上がると、色んなブランドショップや、ハンカチなど小物が売っていた。





「暁斗様、いつも大変お世話になっております」

「皆実様、どうぞご案内いたします」


ブランドショップの前を通るたびに暁斗くんに声をかける店員さんたち。



お、お金持ちだ。。。



やっぱりレベルが違い過ぎる。


私はヨレヨレのバッグをきゅっと握った。




ハンカチ売り場にやってきた。


1枚、千円越え!?
マジ!?


私、100均のハンカチだよ!?
300均で買う時、手が震えたのに。
世の中って怖いね。



あ、このハンカチ可愛い。
ネイビーで、なんだか暁斗くんのイメージだなぁ。


たくさんブランド物持ってるだろうし、私が選ぶ物なんて・・・って思ってしまうけど
やっぱり渡したいんだ。




暁斗くんが挨拶をしてきた店員さんと話しているうちに、私はレジに向かう。
レジというか、おっお会計??



「これ、ください…」

なんだか、すごく緊張するし恥ずかしい。



「ありがとうございます。プレゼントですか?」


ドキンッ

「はい///」


「かしこまりました。リボンのお色はいかがなさいますか?」


私、場違いじゃない?
初めてのデパートでのお会計に挙動不審になってしまってるんじゃないだろうか。



「青で」

なんでかな、暁斗くんのイメージって青色。
水色でもあるかな?
優しい青のイメージ。


ちょこちょこ、赤や黒にもなるからよくわかんないけどね。



優しい店員さんのおかげで無事購入が出来た。

私は鞄に買った物を隠して、暁斗くんを探す。



「いお!」

暁斗くんがこっちに走ってくる。



「どこ行ってたんだよ。探しただろ」

「ご、ごめんなさい」


少しでも驚かせたくて。



「勝手にウロウロすんな。ガキのくせに」


ガキ〜!?

同い年なんだし、それはあんたも一緒でしょ〜!


やっぱりイメージカラーを黒に修正しようかな。



「ちょっとついて来い」


ビビるほどの安定の命令口調。
それでも、前より心地よく聞こえるのは私の心が患ってるからだ。

暁斗くんを好きって思う病気に。
重病だな。



デパートを出てしばらく街を歩く。

暗くなるとイルミネーションがとても綺麗で、心が躍る。



「綺麗…」


ぎゅっ
手を繋がれた。


ドキッ

「こっから人多いから。はぐれんなよ」

「は、はい」


ねぇ、周りからは…せめて誰か1人だけでも
私たちがカップルに見えたりしてますか?

もし、そうだと嬉しいな。



「お前小せぇし探すの面倒だからな。迷惑かけんなよ」


いや、やっぱりいいわ。
こんな一言以上多い奴、ウザイわ。

私の心は、振り回されて忙しい。
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