大嫌いな王子様
しばらく人混みの中を歩いていくと、目の前に夜とは思えない程の明るい広場が見えてきた。
「すご…」
「どんなけ電気使ってんだ?」
なんちゅー現実なことを言い出すんだ、コイツは…
昨日はツリーを見せてくれて、今日はこれを見せるために連れてきてくれたの?
白い息が寒さを表す。
だけど、繋いだ手が温かいから、こんな寒さ全く気にならない。
イルミネーションを見てから、広場の隅に行き少し休憩をする。
「思ったよりすげー人だな」
「毎年こんなすごいんですか?」
「わかんねぇ。初めて来たし」
そう…なんだ。
私と来てくれたのが初めてなんだ?
やば…すごく嬉しい。
「あ?なにニタニタしてんの?キモイぞ」
いけない、忘れちゃダメだ。
80%俺様悪魔のキモ野郎で、残り20%が優しい天使?(いや、天使は言い過ぎか)だった。
あ、今ならいいかな?
私は鞄を漁る。
「あの!暁斗くん、これ…」
迷惑かもだけど、いらないだろうけど
「?なにこれ?」
「よかったら…開けてみてください」
うわー。
なにこの緊張感。
暁おとの時やダンスパーティーで味わった緊張感とはまた違う。。
それになんだかちょっと怖い。
ガサガサー…
暁斗くんが包装を剥がしていく。
その剥がし方も綺麗で、育ちの良さを実感してしまう。
私とは住む世界が違うんだよね。
わかってるんだけど、せめてこれぐらいはいいよね?
「え…」
「あ、あの!迷惑かもだし、いらないだろうけど…もし気が向いたら使ってあげてください」
日本語変だ。
「ハンカチ…と靴下?」
ネイビーのハンカチと靴下をプレゼントした。
「あはは!!」
いきなり暁斗くんが大声で笑い出した。
「え!?なんですか!?」
やっぱり変だった!?
っていうか、いらないよね!?
だよね!!
「選んでくれたんだ?いおが」
「は、はい…」
ものすごく笑顔の暁斗くん。
これは…ご機嫌モード…ですか??
喜んでくれてるんでしょうか??
「おっさんみたいな靴下」
ガーーーーーーンッ!!!!!
最低!!!
「わー!もう返して!!鬼!悪魔!キモ野郎!!!」
どうせセンスなんてないですよ!
バカバカバカバカ!!
私に届かないようにプレゼントを持った手を上に上げる。
「卑怯です!キモ野郎!」
グイッ
出た!顎クイ。
「俺は“暁斗”だよ」
ドアップになる綺麗な顔に、またまた動揺してしまう。
「暁斗くんのバカ!家族以外で初めて渡したプレゼントなのに…!」
バイト代から、勇気を出して渡したプレゼント。
暁斗くんの手が顎から私の両頬にいった。
むにっ!
「それ、ほんと?」
「ほ、ほんどう…でず……」
頬を挟まれて、うまく喋れない。
チュッ
おでこに温かな感触を感じた。
暁斗くんが私のおでこにキスをした。
これで2度目!!!
まだ頬を挟まれたままで動けない。
私の顔はもう絶対真っ赤だ。
「せっかくだから使ってやるよ♪」
なんだと〜!!
どこまでも俺様なんだから!!
ーーーーーーー
「へ〜面白いもん見れた♡」
広場の端の方に見えたのは、皆実と阿部伊織。
「佐伯くーん!あっち行こうよ〜!」
「帰るわ」
「ちょっちょっと!?佐伯くん!?」
あー、つまんね。
周りにはロクな奴がいねぇ。