大嫌いな王子様 ー前編ー
ep.9 場違いな想い
暁おと問題は一旦休戦となり、もうすぐ年末。
あれから暁おとは別邸で過ごし、昨日から海外に行っているという。
次元が、なんかすごい。
私というと、年末の大掃除をしている。
お金持ちの家は広すぎる。
「伊織さん、こちらを坊っちゃまにお出ししていただけますか?」
「わかりました」
牧さんから預かったコーヒーを暁斗くんの部屋まで運ぶ。
コンコンコンッ
ノックは3回だよね。
飯田さんに習った。
「はい」
「暁斗くん、コーヒー持ってきました」
「あぁ」
ガチャッ
部屋に入る。
「そのへんに置いてて」
「わかりました」
年末ということもあり、かなり多忙な暁斗くん。
なのに、この前のクリスマスは時間を作ってくれた。
そう考えると、ものすごく嬉しい。
(暁斗くんに負担かけてるけど)
っていうか、同じ高1なのに暁おとの会社の仕事手伝ってるんだよね?
深くは知らないけど、ほんとにすごいな…
「なに?」
「え!?」
「こっち見てるだろ」
バレてた!?
「とくに何も!!ありません!!」
「あっそ。じゃあとっとと出てって」
バタンッ
安定のキモ野郎モードでした。
ううん、違うか。
仕事中なんだから当たり前だよね。
仕事頑張ろ!!
私は掃除にとにかく専念した。
ピカピカにしてやるんだ。
だって気を抜くと、イヴとクリスマスのキス(頬とおでこ)を思い出しちゃうから。
暁斗くんには絶対深い意味ないんだ。
だってあれからも、かなり普通でどっちかと言うと冷たいぐらいの勢いだもんね。
暁斗くんは通常運転。
私が勝手に盛り上がったり下がったりしてるだけ。
「坊っちゃま、お仕事がご多忙なようで夜もお食事はいいとのことです」
「それは…心配です」
朝もお昼もまともに食べてないじゃん。
「飯田さんから、食べるように言ってもらえませんか?」
「お伝えはしたのですが…」
うーん
「よろしければ、伊織様からお伝えいただけないでしょうか?」
「私から!?絶対無理だと…」
「お願いいたします」
渋々、暁斗くんの部屋へやってきた。
コンコンコンッ
無言。
しばらく待つが反応がない。
コンコンコンッ
やっぱり反応がない。
勝手に開けるのは…だけど
ガチャッ!
開けちゃいます!!
「失礼します」
え!?
「暁斗くん!?」
そこには机に項垂れている暁斗くんが。
「どうしたんですか!?」
息が荒くて苦しそう。
おでこに手を当てると
「あっつ!」
すごい熱。
どうしよう!!
私は飯田さんにすぐ電話をした。
「暁斗くん!!しっかりして!!」