大嫌いな王子様 ー前編ー
「キスが挨拶だぁ?なに言ってんのお前」


「だって…アンディーさんとしてたじゃないですか!」

しかも両方のほっぺに!


「あー…」

珍しく目が泳ぐ暁斗くん。
ほら!図星!


「あれはマジで挨拶だし」

「だから、私も挨拶ですよね」


グッ

両手首を掴まれた。



「俺がなんでお前に挨拶のキスなんかすんの?」


だ、だって…


「わかんねぇんなら…わかるまでしてやるよ」

「ん…!」


またさっきの感触。
暁斗くんの温もりが唇から伝わる。

さっきのキスとは比べ物にならないぐらいの長いキスに、頭がボーッとしてしまう。



「まだわかんねぇの?」

ゆっくり離れていく唇。


待って…って言いそうになっちゃった自分に驚いてしまう。



「これがアンディーと一緒?」

私はブンブンと首を横に振る。




「アンディーとの挨拶が気になったんだ?」

あ…意地悪な顔してる。


「別に〜…」


「素直にならねぇと、もっかいするぞ」

むにっと両頬を片手で挟まれる。



もう、ごまかせない。
身分も何もかも違うけど…せめて好きでいるだけはいいですか?



「なりました。す…好きなんだもん!」

ポロッと涙が出た。



「私なんかが好きになってごめんなさい…」



ぎゅう!!


「暁斗…くん!?」

暁斗くんの腕の中。
抱きしめてくれる力が強くて、少し息が苦しくなるほど。



「ヤキモチってやつか?」


「わっ!恥ずかしいからそんなこと言わないでください」


「あははは!!」


抱きしめられてるから顔は見えない。
ねぇ、顔を見せてよ。



ゆっくりと離れる体。


「好きだよ、絶対離さねぇから覚悟しとけよ」



えーっと今…私好きって言ってもらったんだよね?
だけどなんだろ。。

このちょっと脅されてる感覚は。

なんかこう、もうちょっとロマンティックなシーンというか…

初恋だし、彼氏とかもちろん出来たことないし、そもそもこういうことに無縁だったし色々わかんないんだけど

確実ロマンティックではないよね



「おい、聞いてんのかよ?」

「ぶはっ!!」

でも、これが暁斗くんだよね。
暁斗くんらしくて嬉し過ぎる。


「あ?なに笑ってんだよ」

「暁斗くん、顔赤いー!」

ほら、耳まで真っ赤になってる。





チュッ

ほっぺにキスされた。


「マジうるせぇ。やっと黙った」

優しく笑う目の前の暁斗くんは、天使モード…?




「これからも俺のそばにいろ。バカでも、もうわかったな?」


いや、安定の俺様悪魔キモ野郎モードだ。



「わかんないです」


私だって抵抗ぐらい出来るんだから。


「お前…」

「ちゃんと言ってくれなきゃわかんないです」


私、今かなり調子乗ってる。
きっとウザイって言われる。
キモイって言われる。
それでもいい。
自惚れでもいい。

だけど、1%でも可能性があるなら
期待していいなら
暁斗くんの口からちゃんと聞きたいんです。


どうせ無理だとわかっていても


「俺の彼女になれ。もう次は言わねぇぞ」


え………


「今…なんて……」

「もう言わねぇって言ったよな?」


だって
そんな返事がくるなんて思ってなかったから…



「うぅ〜!!」

嬉し過ぎて涙が出る。



「は!?なんで泣くんだよ!」

「暁斗くんのせいだよ〜」


私、むっちゃ面倒くさいだろうな。
今の自分が、自分でも嫌。
だけど、嫌じゃない。

意味わかんない状態。



「チッ…」


ちゅっと優しく目元にキスをしてくれた暁斗くん。



「俺と付き合って、いお」


夢じゃないんだ。


ボロッ

涙は止まらない。
嬉し泣きってこういうのなんだね。


嬉し泣き、、、もう何年もしてない気がする。


「返事は?Yes以外言わせねぇけど、一応聞いてやる」



どこまでも俺様。


だけど、私はそんなあなたが…暁斗くんが好きなんです。
病気だと受け入れます。



「暁斗くん好きです。付き合ってください」



「…バーカ///」



暁斗くんはそう言って、また優しくて温かなキスをしてくれた。

キスはハーブティーの味がした。










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