大嫌いな王子様
お手伝いさんと同じ格好になり、玄関の床やリビングや階段の床掃除…


広過ぎて床掃除だけで終わっちゃう!!

てか、時間足りないかも!!


ふと時計を見ると22時を回っていた。


急がなきゃ。
あと2段拭けば、この階段は終わり。



「いつまでかかってるん?」


階段の下から聞こえたムカつく声。



「遅くてすみませんねー」

「そんなちんたらしてたら給料払わねーぞ」


なにー!?
こんなに必死でしてるのに!?



「…飯食うぞ」

「はい、どうぞ」


「お前も来い」

「は!?なんで私が?」


キモ野郎←(名前が長くて言うのが面倒になった)が階段を上がって近づいてくる。



「まだだろ?晩飯」


急にそんな優しいトーンで言わないでよ。


「わっ私は家政婦ですよ!?それにまだここが終わってないから…!」


ツルッ

少し動揺してしまい、手元が滑った。


ヤバイッ顔ぶつけちゃう!





・・・・あれ?

痛くない??



「はー…あぶね」

キモ野郎が私の上半身を支えてくれて、私は顔面からの激突を回避出来た。



「あっありがとう」

「まぬけ。早く来い」

「でもまだここの掃除が…!」

「もう十分ピカピカだって」


ほら、またそうやって笑う。
キモ野郎に似合わない爽やかな笑顔。



「あと5秒で下りてこなかったら今日の給料無しな」

「はぁ!?」


バタバタバタバタ!!
私はこれでもかってぐらいの勢いで階段を下りた。


うぷっ

なんかキモ野郎のギャップに悪酔いしてきた。





——————————

なんですか、これは。


目の前に見た事ない豪華なお料理がたくさん。


「お待たせいたしました」


お料理を並べてくれたお手伝いさんたちがリビングを出ていく。

いや、ここはもはやリビングと呼んでいいのか?
そんな次元の部屋ではない気がする。



「あのー…」

「なに?」

「他のお手伝いさんたちは一緒に食べないんでしょうか?」

「あぁ」


なんで?
私だけ?
それはなんかすごく嫌だ。


「じゃあ私も仕事に戻ります」

「ダメだ」

「でも…!」

「食事中だ。静かに食え」


返す言葉がない。


「いただきます…」
私は渋々食事を始めた。


こんな豪華なお料理なのに、こんなに味を感じれない食事は初めてな気がする。



カチャ、カチャンッ

ナイフとフォークで食べる事になれてなくてガチャガチャしちゃう。

どうしよう。
うるさいって怒られるよね。



「ちょっと」

キモ野郎が近くにいた飯田さんを呼んだ。



「こちらもお使いください」

少しして飯田さんがお箸を持ってきてくれた。


まさか、これを頼んでくれたの?


キモ野郎は静かに食事を続けている。
すごく綺麗な食べ方。
羨ましいほどに。
育ちが良いのが身に染みてわかる。


なんだか自分が恥ずかしくなるなぁ。



「普段通りに食え」

「えっ?」

「お前らしくでいいから」

「は…い」


キモ野郎がよくわからない。

むっちゃキモイのに、腹立つのに優しい所があってわからなくなる。



「こっちじろじろ見んな」


あっ、やっぱりキモイ。
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