大嫌いな王子様 ー前編ー

お風呂も入り、部屋でひとり暁斗くんを待つ。


23時半。


夜遅くまで大変過ぎる。
さっきまでは早く会いたかったけど、今は心配が勝ってる。


倒れてるとかない?
いや、飯田さんが一緒だから大丈夫だよね。
連絡してみようかな。
でも、忙しいかもだし。

部屋の中でウロウロ落ち着かない。




コンコンッ

ガチャッ
「暁斗くん!?」

「うわっ!ビビった。いきなり開けんなよ」


ノックにすぐさま反応して、返事する前に開けてしまった。


「悪い、遅くなった」


よかった

「無事で良かったぁ〜…」


会えたらすぐ抱きしめたいとかいっぱい考えていたけど、暁斗くんが無事に帰ってきてくれただけでこんなに嬉しい。



バタンッー…

ドアを閉めて、暁斗くんが私の部屋の中に入った。



暁斗くんはまだスーツ姿。
帰ってきてすぐ来てくれたの?


「お風呂入らなきゃですね。お湯、沸かしてきます」

部屋を出ようとしたら、後ろから抱きしめられた。



「やっと会えたのに出て行くんだ?」


ドクンッ


「声、聞きたかったんだろ?」

改めて言われると、すごく恥ずかしい。


「いお…?応えて」


いつも俺様のくせに、急に優しくなるのズルい。



「聞きたかったです……それに」

「それに?」


「すごく会いたかったです」 


「…………」


え、無言!?
というかシカト!?

私、なかなかの勇気を振り絞ったんだけども。。


「あ、今の忘れてください!ね!?」


暁斗くんの手が私の顔をクイッと後ろに向ける。



「ん…!」

いきなりのキス。

そのまま体は暁斗くんの方へ向いて、私の背中は壁にトンと当たった。



「あき…ん……!」

少し息苦しくなるほどの長いキス。
苦しいのに嫌じゃない。



「勝手に俺から離れるなんて許さねぇ」

ジッと私を見る目。
吸い込まれそうになる目。
その目から私は目をそらせない。


「だって…暁斗くんと一緒にいたいからだよ」

私の気持ち、わかって。


「あ?一緒にいたいならここにいればいいだろ?」


「違うよ。暁斗くんのお父さんにちゃんと認められたいから…だからいつまでも甘えてちゃいけないの」


堂々と一緒にいたいから


「暁斗くんの彼女…だって…胸張れるようになりたいから」


恥ずかしくてどうにかなりそう。
顔だって絶対真っ赤だ。
でも、ちゃんと伝えなきゃって思った。
この大好きな気持ちを。



「はー…」

聞こえてきたのはため息。

なんでため息を吐くの?
呆れた?
面倒くさくなった?


「ごめ…」

「どんなけ夢中にさせんの?」

「え?夢中…?」

「いおはズルくて卑怯」


なっ!!!


「それは暁斗くんだよ!」

「は?俺のどこが?」


ガーーーンッ
さすが俺様

自覚なしかい!!



「せっかく付き合えたのに…ずっと冷たいし、かと思えば引越しとかダメって言うし…意味わかんなくて振り回されてばっかだよ!!」

ほんとにムカつくほどに
それが自覚なしとは、私の恋は途方に暮れる。



「へぇ〜…俺に振り回されてんだ?」

出ました、意地悪モード。


私はプイッとして無視をした。


グイッ
でも、すぐさま暁斗くんの方を向かせられる。



「応えろ」

なんでそんなに偉そうになれんの!?
それもこれも、こんな偉そうな奴にドキドキしっぱなしの私が悪いんだ!!


「だって暁斗くんが生まれて初めての彼氏だから…付き合うってどんなのかわかんないし、浮かれちゃったりもしちゃうんだもん…」



クスッと笑った暁斗くんは、また長いキスをした。


「ふぁっ…!暁斗く…息出来ない…」

「いお、キスに応えろ」


なに!?意味がわかんないよ


「いおからキスして」


ドクンドクンッ


「恥ずかしくて…出来ない」

「じゃあ、もう俺も2度としない」


鬼だ、悪魔だ、キモ野郎だ


「フルコンボできたな…」

「何意味わかんねぇこと言ってんの?」


悔しい!悔しい!!!


ちゅっ!

私は超絶短いキスをした。
それでも恥ずかしさで心臓は爆発寸前。
絶対そろそろ病院送り決定だな。



「よく出来ました」

そう言ってニコッと笑いながらまたキスをくれる。
暁斗くんが全然わからない。


「暁斗くん、何考えてるかわかんないよ…」


「なら、もっと俺を知れよ。付き合うこともキスも全部、俺で知ればいい」


この命令口調。
腹立たしい口調。

勝気な目。
上から目線。


全部ムカつくのに、全部愛しい。


大好き。

私たちはあきれるほどキスをした。

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