大嫌いな王子様 ー前編ー
ep.12 ライバル登場?
「暁斗くん、聞いていますか!?」
「ウザイぐらい聞こえてる」
基本塩対応の俺様ベースは変わらない。
そんな彼をこれから塩野郎と呼ぶことにしようかな。
違う違う、こんなこと考えてる暇はなくて
「暁おととの約束の期限がやってくるんです!」
「あ?アキオト?お前、ちょこちょこわけわかんねぇこと言うよな」
珍しく仕事ではなく読書タイムの暁斗くん。
そんな優雅な日曜日の午後を過ごしているところ、大変申し訳ないですが私には急ぎの用件があるのです。
「暁斗くんのお父さんとの約束です!」
「あんなの気にすんな」
それで終わり??
「約束破るわけにはいかないんです!認められなくなっちゃいます!」
「あんなくそオヤジに認められなくても問題ない」
こ、コイツ〜!!
「私には問題大有りなんです!!暁斗くんのバカ!!!」
もういいもん、ひとりで考えるんだから。
ギシッ
いつの間にか私が座っていたソファにやってきた塩野郎。
「そんなに俺と一緒にいたいのか?」
なんやねん、その上から
「もう知りません!全然知りません!」
意味わかんない私の返事
「可愛くねー」
「なっ…!」
チュッ
塩野郎が私のほっぺにキスをした。
「父さんのことは心配すんな。もう手は回してるから」
「え、何を…!?」
「お前は知らなくていいこと」
「また秘密ですか!?」
暁斗くんが無理してばっかじゃない
「教えてほしい?」
「はい!」
「じゃあこれ飲ませて」
はい?コーヒーを?
そういえば今日はホットじゃなくてアイスなんだ
寒いのに珍しい。
「どうぞ」
私はグラスを渡した。
「あ?ちげーよ」
「他になにか飲みたいんですか?」
相変わらずわがまま坊っちゃまだなぁ。
暁斗くんは私からグラスを取ってアイスコーヒーを飲んだ。
そして、そのまま近づいてくる。
「暁斗…くん?」
片手で顔を掴まれて、そのまま唇に暁斗くんの唇が触れた。
「ふ…」
口の中に冷んやりとしたものが入ってきた。
なに…これ……
口の中は冷たいけど、顔は一気に熱くなる。
「これでわかったろ?次お前の番」
「何言って…!」
こんな恥ずかしいこと出来るわけないじゃない
「もう一回教えてやろうか?」
えげつないほど俺様でついていけない。
ドキドキされっぱなしで悔しい。
「暁斗くん、私…!」
コンコンコンッ
「坊っちゃま、よろしいでしょうか?」
飯田さんだ!
助かったー!!!
「チッ…入れ」
邪魔をされたかのように
塩対応時々俺様時々甘口(漢字ばっかで見にくい)
の暁斗くんは、かなりご機嫌ななめになっている。
暁斗くんを知れば知るほど、色んな暁斗くんが見えて思考が追いつかない。
「いつまでサボってんだ?とっとと仕事しろ」
ギロッと睨まれ、一気に塩対応になった。
「わかりました」
私は仕事に戻るため、トボトボと仕事部屋を後にした。
「フッ…」
「坊っちゃま、ご機嫌ですね」
「あ?ふざけたこと言うな」
「失礼いたしました」
飯田が窓を開けた。
「さみーよ。何すんだよ」
「こんないいお天気ですから、どこか出かけられたらいかがですか?」
「アイツ仕事」
「なかなかない坊っちゃまのオフですよ」
「アイツは仕事はちゃんとしないと嫌な奴だから」
そう。そういう所も好きな所のひとつ。
「はて…伊織様のお仕事内容は坊っちゃまの身の回りのお世話がメインだったと存じておりますが」
「何が言いてぇんだよ」
「女性はデートにお誘いしないと、離れちゃいますよ」
うーわ、すげーウザイ
「うっぜー。余計なお世話だ」
「出しゃばりました。申し訳ございません」
ったく…
「買い物に出る。アイツ荷物待ちで呼べ」
「かしこまりました」
飯田が部屋を出て行く。
「坊っちゃま、例の件うまくいきました。年末年始とお仕事を詰められました結果が出ましたね」
「当たり前だ。あのオヤジの思い通りにしてたまるか」
「伊織様を呼んで参ります」
パタンッ
俺だって付き合うのも、ましてや人を好きになるのも初めてでどう接したらいいかわかんねぇんだよ。
何をすれば喜ぶ?
笑ってくれる?
優しくしたいのに出来ない自分がもどかしくなる。
なら、せめて
仕事でアイツを守れるなら全力で守ってやる。
コンコンコンッ
「失礼します」
そばにいないと無理なのは俺の方。
「買い物に出られるとかで…私いりますか?」
なんだよ、俺と出かけたくねぇのかよ。
「荷物持ちだよ。すぐ準備しろ」
「はい…5キロまでですよ?」
また意味わかんねぇこと言ってる。
あーあ、俺完全にハマってるわ。