大嫌いな王子様 ー前編ー

「あれ?今日も車乗らないんですか?」

「乗りたいのか?」

「いえ!」


車乗らないのが珍しいから。



「なぁ、その…」

「はい??」


あれ?暁斗くん、なんだか少し顔赤い?


「ヒャッキン…?っていうとこ、連れて行け」

照れてるのか、そっぽ向いてそう言う姿に胸がきゅんもなる。


「わぁ!ぜひ!」


嬉しいな。
暁斗くんが私の知っている世界に来てくれる。





100均に到着。


「ん?値札ねーな」

「だって全部100円ですもん。あっ、税込110円です」

「は…?100円?」

「はい。たまに200円以上の物もありますが」

「なんだそれ…。この店のもん、全部買えんじゃん」


出たよ、金持ち発言。
怖いのは本人は無自覚な所。



「あの人、イケメンじゃない?」
「かっこいい!声かけたい!」

周りからヒソヒソ声が聞こえる。


まぁ、完全場違いなぐらいオーラ放ってるよね。

かっこいいよね。
うっとりするほど。


「おい、キモイ顔して突っ立ってんなよ」

黙ってる時限定だけどね。
喋ると全て崩れるから。



「なんだこれ、ゆで卵を作るアイテム…?」

でも楽しそうだからいっか。
こんな風に無邪気にも笑うんだね。

色んな暁斗くんが見えて私の感情は大忙し。


「これ被ってみて」

「絶対変な奴じゃないですか」

「あはは!!」

今、私たちってカップルに見えてますか?
普通のカップルに見えてますか?





「あっ!暁斗くん、たい焼きありますよ」

「たい焼き?あぁ、魚の形した食べ物?」

たい焼き食べたことないんだ。
軽いカルチャーショック的なものを受けた。



「うまいの?」
「もちろん!」

「じゃあ食う」

なんか今日の暁斗くん、ちょっと可愛いな。


暁斗くんはあんこ、私はカスタードのたい焼きを買ってもらった。



「おいしい〜」


食べるのに夢中で、やっと隣からの視線に気づく。



「お前ってうまそうに食うな」

さっきみたいにすごく無邪気に笑うから、見惚れてしまう。


「あ」

見惚れていると、暁斗くんの顔が近づいてきた。



ペロッ

「カスタードもうめぇ」


ドキーーーンッ!!!!

私の口元についていたであろうカスタードを舐めた。


「あき、暁斗くん!人前ですから」

「別にどうでもいいじゃねぇか」


ドキドキがひどくて、ほんとにこのままじゃ心臓もたないよ。
この人は危険人物だ。



「いおの世界、面白いな」

トドメにそんなことを言うの?
私、このまま消え去っても後悔ないかも。



まるで普通のデートをしてるみたい。




「ラブラブだね〜♡」


ん!?
何やら聞き覚えがある声!


バッと周りを見ると

「えっと…あっ!佐伯くん!?」 

「伊織ちゃん、忘れてたの?寂しいなぁ」


暁斗くんのクラスメイトの佐伯くんがこっちにやってきた。



暁斗くんが私の前に立った。

「なんでお前がいんの?」

「冷たいなぁ皆実くん。せっかくのクラスメイトじゃんか」

「“ただの”クラスメイトだ」


うーわ。
空気悪〜。

この2人、やっぱり仲悪いのかな?



「行くぞ」

私の腕を引き、その場を離れる暁斗くん。



「えー!俺も混ぜてよ♡」


は!!??



「佐伯くん!?」


佐伯くんは私と暁斗くんの間に入り、暁斗くんと腕を組んだ。



「お前!キモイからやめろ」

「なんだよー!いいじゃんか」



それからと言うもの……



暁斗くんがまさかのゲーセンに興味を持ってくれて、私も行ったことなかったからワクワクだったのに……


「おい皆実!このゲームしようよ!」

「おぉ〜!UFOキャッチャーうめー皆実!!」


佐伯くんが暁斗くんにベッタリ。

え。なんでなん?


私は置いてけぼりで、佐伯くんに突き飛ばされる始末。
暁斗くんも初のゲーセンでテンション上がってるっぽいし。



「暁斗くん、こっちのゲームが…「皆実、これはどうだ!?」


フフンと鼻で笑ってこっちを見る佐伯。
もはや呼び捨てにしてやった。
いや、呼び捨てすら鬱陶しいほど。


「暁斗くん、これは…「こっちも面白いぞー」




ゼーハーゼーハー……

私全然ゲーセンで遊んでないのに、なんでこんな息荒いの?

それもこれもアイツのせいだ。


あの2人、仲悪いわけじゃないの!?


なにさ、暁斗くんもはしゃいじゃってさ。


チラッと2人を見る。


でも…なんか………
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