大嫌いな王子様 ー前編ー
ドンッ
引っ張られたまま連れて来られたのは暁斗くんの部屋。
壁に追いやられて、壁ドン状態。
でもね、まったくトキメキとかの雰囲気ではない。
どっちかというと、かなり険悪。
「仕事前に何してたわけ?アイツと」
「えっと…一緒に帰ってただけで…」
仕事の時間は遅刻してないはず。
「ちゃんと時間に間に合うように帰ってきたよ」
「そんなこと聞いてんじゃねぇよ」
なにを怒ってるの?
「なんで佐伯といたんだよ」
「えっと…帰りに門の所にいたの。それでお茶誘われたけど仕事あるから断って、帰り道一緒に帰ってただけだよ」
ただ、それだけだよ。
「お前、危機感とか全然ねぇな」
「…危機感?」
なにを言ってるんだろう?
「チッ……もういい」
暁斗くんが離れた。
「あっあのね!」
「なに?」
相変わらず不機嫌な暁斗くん。
塩対応にも磨きがかかってる。
「佐伯くんと…友達になりました」
絶対興味ないだろうけど、一応報告しておこう。
「あ…?」
ほら、やっぱり興味ないよね!
「ごめんね!いきなりこんな話し。じゃあ仕事してきます」
ペコッと一礼して、私は部屋をあとにした。
「なんだそれ……」
ーーーーーーーーーー
私はドアを閉めてその場にしゃがみ込む。
あー、暁斗くんがわからない。
なんで怒ってるのかもわからない。
せっかく友達が出来た日なのになぁ。
暁斗くんも…もしかしたら喜んでくれるかもって…ちょっぴり期待してた自分がいた。