大嫌いな王子様 ー前編ー

ep.13 野外遠足は張り切って


「今月分の携帯代と引越しの時の費用の分割分、あとお母さんたちへの生活費立て替え分です」


「何回言えばわかんの?いらねーんだけど」

「ではここを辞めます」

「は?ケンカ売ってんのか?」


いや、全く売ってないんですが…


毎月必ず渡すんだけど、絶対に受け取ってくれない。


「暁斗くん、こういうのはきちんとしましょう!お世話になりっぱなしは嫌なんです」


「別に世話してるつもりねぇ」


めっちゃお世話してくれてるじゃない!!

「じゃあせめて、お母さんたちへの生活費だけは受け取ってください。それか、私からお母さんたちに渡すようにさせてください。あっあと携帯代と!」


はぁーっとため息をついた暁斗くん。


「お前ほんと頑固だな」


ガタッと席を立つ暁斗くん。



「じゃあ、給料で何か服とか鞄とか買えよ。そしたら受け取ってやる」


「えっなにそれ…」


ハッ!!!

もしや、やっぱり私の服装ダサイとかヨレヨレとか思ってた!?
いや、思うわなそりゃ。
いつの服着てんねんって思うわな。



「なにヘコんでんの?」

「いえ別に…ダサくてごめんなさい」


私の意気消沈ぶりにちょっと呆れてる様子の暁斗くん。


「ダサイ?なに言ってるかわかんねぇけど、いお自分に使わねぇだろ?たまには自分に使え」


え……そんな風に思ってくれてたの?


「ちょっとはオシャレになれ」


やっぱりダサイって思ってるんじゃんかー!!!


「デリカシーないキモ野郎!!」

「なんだと?しばくぞテメェ」



「坊っちゃまも伊織様も言葉が悪うございます」


こんな言い合いは日常茶飯事で、それを飯田さんが収めてくれるまでがひとつの流れになっている。




———————————————


「それで?オシャレな服と鞄と靴が欲しいと。なるべくコスパ良く」

「その通り!!さすがみっちゃんだね!てか、コスパってなに?」  

「漠然としすぎだわ!!あんた、コスパも知らないの!?」



放課後、今日は仕事が休み。
みっちゃんにお願いして早速買い物に出かけている。



なんだかすごくワクワクする。


「なにひとりで笑ってんの?」

「だって、みっちゃんとこうして買い物とか初めてじゃない?すごく嬉しくて」


「…なんか御曹司くんがあんたを選んだ理由がわかる気がするわ」

「え??どういうこと??」

「別に♪まずは服からだね」

「うん!」


学校帰りに友達と制服のまま寄り道。
さらにはお買い物まで。

幸せ過ぎてどうにかなるんじゃないかと怖くなるほど。




みっちゃんに見繕ってもらい、色んなお店を回って無事服、靴、鞄をゲット出来た。


「みっちゃん、神様!!」
「神様のハードル低いわ」


思い切って数着買った服。
早く着たいな。

ワクワクする。


「伊織さぁ、メイクもしようよ?」
「私なんか…」

メイクといえば、ダンスパーティーの時にしてもらった以来。


「コスパ良いメイク用品いっぱいあるから見に行こ!」

「う、うん」



ーーーーーーーーー

結局買ってしまった。
アイシャドウにマスカラにアイブロー。
アイブローって眉毛描くやつなんだな、初めて知った。


「時間まだいける?」

スマホを見ると17時半過ぎだった。
楽しい時間はあっという間だなぁ。


「私はまだ大丈夫だけど、みっちゃんは?」

「私もいける。ちょっとどっか入ってメイクの練習しようよ」


みっちゃん、そこまでしてくれるの!?

「美咲様〜!!ありがとうございます!!」
↑みっちゃんの名前

「そこのカフェ行こ」


カフェ代も今日ぐらい良いよね。
使っちゃえ!


友達とカフェ。
今日のこと全てが新鮮でキラキラしてるように見える。


「さっやるよ」
「よろしくお願いします」


しばらくして、目を開ける。

「見てみて」


鏡を見ると

「わ…あ……」

まるで自分じゃないみたい。

「伊織さ、可愛いんだからもっと自分構ったげなよ?」

「可愛い!?私が!?普通以下の私が!?」

「いや、普通よりほんのちょっと下ぐらいだからギリ普通じゃない?」


みっちゃん…全然フォローになってない気がする。
なんなんギリって。
でも、そういう所も大好きだよ。


「みっちゃん、ありがとう!」

「明日からメイクしてから来なよ。練習かねて」


私、出来るかな。
何時起きになるんだろう。


カフェを出てみっちゃんとの帰り道。
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