大嫌いな王子様 ー前編ー
「お姉さんたち、可愛いね。今帰り?」
知らない男の人が3人、声をかけてきた。
「はい、そうです」
「バカ伊織。答えなくていいんだって」
「え?」
こんなこと今までなかったから、よくわからない。
「だって道に迷ってるとかかもだし」
「そんなわけないでしょ!」
「あはは!きみ、なんか面白いね!」
私たちのやり取りを聞いてた1人がそう言って近づいてきた。
「奢るしさ。遊びに行こうよ」
「いえ、結構です。帰る時間なんで。お気持ち、ありがとうございます」
私は丁重に断り、みっちゃんの手を引きその場を去ろうとした。
ガシッ
「痛っ」
「そんな冷たいこと言わないでよ〜」
肩を掴まれて動けない。
「しつこいです。離してください」
なんなの、この人たち
怖くなってきた
バシッ!!
「誰の彼女に手出してんの?」
あ、この声は
「俺が相手してあげよっか?」
「いて…いででで…!!」
暁斗くん!!
私の肩を掴んでた人の手を暁斗くんが掴んでる。
ヤバイ!
相手の人の顔色が青白くなってる!!
「暁斗くん!離してあげてください!」
手や腕が折れちゃうかも!
パッと手を離した暁斗くん。
「早く逃げて!」
声をかけてきた3人は一瞬で走り去った。
「逃げてってなんだよ、助けてやったのに」
不服そうな暁斗くん。
あのまましてたらケンカ……いや、相手の人に何かしらのダメージを絶対与えてるに決まってる。。
「ありがとう。…暁斗くん、なんでここに?」
制服でもスーツでもなく、普段着の暁斗くん。
「あー…いや…」
ん??なんか言いにくそうだなぁ。
「御曹司くん、助けてくれてありがとう。私のこと覚えてる?」
みっちゃんが暁斗くんに話しかけた。
「あぁ。いおの友達だろ?」
「覚えてくれてるならよかった」
暁斗くんとみっちゃんが話をしてる。
それもすごく嬉しい。
「暁斗くん、みっちゃんです。名前も覚えてね」
「気が向けば」
みっちゃんにも安定の塩対応。
「ちょっと暁斗くん!」
「あははは!!御曹司くん、いい性格してるね。伊織が振り回されるわけだわ」
みっちゃんが大笑いしてる。
珍しい。
「御曹司くん、今日みたいな時間作ってくれてありがとうね。伊織のこと大事にしてね。さもないと承知しないから」
そう言ってみっちゃんは歩きだした。
「ここでいいや、じゃーね伊織」
「みっちゃん!またね!今日はほんとにありがとう!」
みっちゃん、帰っちゃう。
「おい、みっちゃんだっけ?」
ピタッと立ち止まるみっちゃん。
「言われなくてもわかってんよ」
暁斗くん、笑ってる。
「それなら合格!」
みっちゃんもそう言いながら笑ってた。
「暁斗くん、何か用事とか?」
「べつに」
じゃあ、なんでこんな所にいるんだろ。
「お前ほんとに連絡してこねぇな。スマホ解約すんぞ」
「え!なんでそうなるの!?」
いきなりお怒りモード!?
「…ったく。帰るぞ」
私が持ってた紙袋を持ってくれた。
もしかして、わざわざ来てくれたの?
自惚れかもだけど
「迎えに来てくれたんですか?」
2歩ほど前を歩く暁斗くん。
チラッと顔を覗くと赤くなっていた。
「えへへ!ありがとう暁斗くん」
「なにキモイ顔で笑ってんだ」
そんな発言さえも愛しく感じるんだから、恋ってほんとすごいね。
「次連絡なかったら即解約だからな」
「暁斗くんこそ連絡してよ」
心配して来てくれたって思っていいかな?
探してくれたのかな?
ごめんね暁斗くん、私すごく嬉しい。
でも、連絡は気をつけます。
「みっちゃんにメイクもしてもらったよ」
どうせ何も言ってくれないだろうけど。
ジッと私を見る暁斗くん。
もしかして気づいてなかったとか!?
いや、今見てもわかんないとか!?
「可愛いからナンパされんだよ」
え………
「今…可愛いって……」
「隙見せんな、わかったな?」
隙ってなに!?
「もう1回言ってー!」
「うるさい」
暁斗くんは素直じゃない。
最近わかってきた。
「暁斗くん、今日はほんとにありがとう!みっちゃんと学校帰りにこんな風に遊べてお買い物出来て暁斗くんと帰れて…幸せいっぱいの1日だったよ!!」
暁斗くんがくれた幸せ。
「…バーカ。こんなんで満足すんな」
私のおでこをペチッとして微笑む顔。
優しくてちょっぴり意地悪な笑顔。
チュッ
気付けば私は背伸びをして、暁斗くんのほっぺにキスをしていた。
「いお…」
「かっ帰るよ!!」
わぁ〜恥ずかしい!!
「お前どんな服買ったの?」
「安くてすっごい可愛い服があったの。みっちゃんセレクトだよ」
こうして世間話をしながら帰る帰り道。
幸せ以外に当てはまる言葉が思いつかない。