大嫌いな王子様 ー前編ー
グイッ
「わっ」
後ろから腕を回されて、体が後ろに倒れた。
トスンッ
誰かの体に当たった。
「どーも。俺のこと?」
この声は!!??
「暁斗くん!?なんで!?」
「まさか同じ場所とは思わなかったけど」
え!意味がわかんない。
なんで暁斗くんがいるの!?
なにが起こってるの!?
「あれー?御曹司くんも野外遠足?やっぱ優聖が来てるんだ」
「あぁ。同じ日、同じ場所でビビったけど」
嘘。こんな偶然ある!?
「それで?さっき俺のこと話してなかった?」
相変わらず、暁斗くんは私を後ろから抱きしめてる。
(肩らへんに腕を回してる状態ですが…)
「あ、あのねこの人はクラスメイトの長谷川くんって言うの」
「ふーん」
「長谷川くん!さっき言ってた人がこの人で皆実くんと言います」
そういえば…なんで私が自己紹介してるんだろ?
「へぇ〜。なんか馴れ馴れしい人だね。そんなくっついて」
おわっ!
なぜに暁斗くんにそんなケンカ腰!?
危険だよ、その接し方は!!
「この2人付き合ってるんよ。ね、伊織♡」
わぁ〜すぐバラしちゃったよ、みっちゃん。
「すげー!阿部さんって皆実暁斗と付き合ってるんだ!?」
金谷くん、声大きい。。
「皆実マジか!言えよなぁー!」
後ろに並んでたのは、暁斗くんのクラスメイトのようでそこにももちろん聞こえていて盛り上がってる。。
「ふーん…そうなんだ」
肝心の長谷川くんはこれぐらいの反応だし!
なんか…目立ってしまってる。。
恥ずかしい。。
「そ。俺の彼女。面白い奴だから仲良くしてやって」
ドキンッ
周りに【彼女】とハッキリ言ってくれたのが嬉し過ぎて、さっきまでの恥ずかしい気持ちが一気に吹き飛んだ。
わしゃわしゃ
「わぁ!なに!?」
暁斗くんが頭を撫でてくれたけど、力が強くて髪がボサボサになった。
「楽しめよ」
あぁ、どこまでも上から。
周りを振り回したと思ったら、勝手に戻っていく。
ビックリするぐらいのマイペースだけど、これもやっぱり暁斗くん。
「暁斗くんこそ!」
私たちの後ろに並ぶだけだから、すぐそこにいるんだけどね。
まさかここで会えると思ってなかったから、ドキドキがまだおさまらない。
ひそっ
「御曹司くんってさ、結構束縛強いんじゃない?」
「なっなに!?いきなり!!」
みっちゃんがひそひそと話しかけてきたかと思ったら、何を言い出すんだ!?
「伊織のことが好き好きなんだね〜。憧れるわ〜」
え?なぜそうなる?
「そうかな?家では【ふざけんなテメェ】とか【黙れ】とか【キモメイド】とか山ほど言われてるけど」
「………あんたらほんとに子ども。。」
私たちの普段のやり取りを聞いて、みっちゃんは呆れてる様子。
金谷くんは付き合ってることになぜか感動してくれている。
長谷川くんは、特に無反応。
まぁこれ以上深く聞かれなくてよかった。
そんなバタバタをしていたら、順番が回ってきた。
暁斗くんたちも同じコースターに乗る。
「杉本さん、隣いい?」
「えっと、隣は伊織が…」
「いいよいいよ!私長谷川くんと乗るね」
金谷くん。みっちゃんと話してるとすごく楽しそうだし、きっとまだ話したいんだろうな。
「長谷川くん、私が隣でもいい?」
「俺は全然いいけど」
ガチャンッと安全バーをおろす。
初めての絶叫マシン。
緊張がすごい。
後ろの方では暁斗くんたちも乗ってるのかな?
誰と乗ってるんだろう。
ガタンッ
そんなことを考えているとコースターが動き出した。
上にあがりだした。
わぁ!
思ったより高い!
ヤバイ、怖いかも。。
ぎゅっ
長谷川くんが手を握ってくれた。
「俺がいるし大丈夫だから」
「…ありがとう」
私はすでに涙目。
あぁ、上までやってきてしまった。
私はぎゅっと目を瞑る。
「落ちるぞ」
長谷川くんの言葉で覚悟を決める。。。
「いやーーー!!!!!」
全然覚悟は決まらぬまま、落ちていった。
途中で「うっ」と自分で言ったことは覚えてるけど、あとは半分意識が飛んでた気がする。