大嫌いな王子様 ー前編ー

ep.14 嵐のはじまり


冬の寒さが少しずつ落ち着いてきた3月中旬。
もう少しで春休み。

期末もなんとか終えることが出来て一安心。



だけど、家では年度末というもので仕事が多忙を極めている暁斗くん。



この2週間ほどまともに話してない。


そういえば、最近はケンカもしてなさそうだしよかった。

誰を探してるんだろう。

暁斗くんの仕事が落ち着いたら…勇気出して聞いてみようかな。



家の廊下の掃除をしながらそんなことを考える。


「おい、ちゃんと集中してやれ」

「おわっ!!」


後ろから大好きな人の声が!
声のトーンや話し方は相変わらずの俺様だけども。



「給料下げんぞ」

ヒラヒラと手を振って仕事部屋に戻っていく暁斗くん。


こんな風に話せたのも久々で、それだけで嬉しい。


そんな毎日を過ごして気づけば春休みに突入。



今日は午後から仕事がお休みの日。
お母さんたちの家へ遊びに行く。



暁斗くん忙しいしなぁ、メッセージだけ送っておこう。
スマホを見ながら歩いていたせいで、角を曲がった所で人にぶつかってしまった。



「すみません!」

「…………」


相手は無言。
怒った…??

顔をぶつけて下を向いていた私は、恐る恐る顔を上げた。



わっ綺麗な顔の男の子。
だけど、目つきがなんだか怖い。



「あ、あの!ほんとにごめんなさい」


私の謝罪は無視で、そのまま歩いていってしまった。


怒らせてしまったかな。
でも…何もされずよかった。。

なんだか怖い雰囲気だったなぁ。



私は暁斗くんにメッセージだけ送って、スマホを鞄にしまった。





「お母さん、最近困ったこととかない?」

「なにもないわ。伊織こそ大丈夫?」

「私は全然!」

「お姉ちゃん、公園に遊びに行こうよー!」

「そうだね!」


久々に晴と2人で公園に出かけた。



こっち方面にも、こんな公園あるんだ。



晴とブランコで遊んでいると

「お!阿部じゃん。一緒の人だれ?」
「お姉ちゃんだよ」

晴のお友達かな?


「お姉ちゃん、ちょっと友達と遊んでいい?」
「行っておいで。お姉ちゃん、ここで待ってるね」


公園のベンチでちょっと休憩。
晴、元気だなぁ。
私もうヘトヘトだよ。


晴が友達と遊んでる姿を見て、ホッとする。
一緒に楽しそうに遊んでて嬉しいな。




「〜〜!!」

ん?
公園の外の路地から、なんか声が聞こえる。

言い合い?


公園の近くなのに物騒だな。


絶対近づかない方がいいのに、私はそーっとその路地に向かってしまった。



少しずつ声が聞こえる。
揉めてる?
警察呼んだ方がいい?



チラッと覗くと男の人が7、8人。



ガッ!!!
その中のひとりの男の人がいきなり殴られた。



「俺らの所抜けるって意味、ちゃんとわかってんだよな?」

殴られた人は、さらに胸ぐらを掴まれた。




プッ

まさかの、殴られた人は相手に向かって唾らしきものを吐いた。


「こんなしょうもない所いるぐらいなら、どうなったって構わねーよ」



「テメェー…!!」




ヤバイ!!!
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