大嫌いな王子様 ー前編ー
「こっちです!!おまわりさん、早く来てください!!」
気づけば私は夢中で叫んでいた。
「チッ…行くぞ!」
柄の悪そうな人たちはどっかに行った。
よかった……
「大丈夫ですか!?」
私はボロボロで座り込んでる男の人の元へ向かった。
あれ?この人…
「あんた…あぶねーだろ。。警察は?」
「あんなの嘘です!騙せてよかったです」
震える手で、ハンカチを渡す。
「すげーな…あんた」
この人、絶対さっきの男の子だ。
「怖い思い…させてごめん」
そう言って、男の子は気を失った。
「ちょっちょっと!?しっかりしてー!」
—————————————
「ん…」
あれ?俺、生きてんだ。
しぶといなぁ、俺。
「大丈夫ですか!?」
え?なんでこの子がいるんだ。
「あれ…あんた確か……」
「あの後倒れて…どうしていいかわからなくなって救急車呼びました」
晴のことはお母さんに頼んで、私は救急車に同乗した。
「ごめん。迷惑かけまくったな」
「いえ!私は全然大丈夫なんで!お医者さん、呼んできますね!」
ガシッ
「大丈夫だから…ちょっとこのままいて」
私の腕を掴む力も声も弱々しくて、心配でたまらなくなる。
「わかりました」
私は椅子に座り直した。
同い年か少し上かな?
あんな怖そうな人たちに絡まれて怖かっただろうな。
ぎゅっ
私は男の子の手を握った。
「もう大丈夫ですよ」
すりっ…
男の子は私の手を自分の頬にそっと当てた。
「あったけー…」
不思議な男の子。
名前も年齢もわからない。
「あの…名前とかわからなくて…保険証とか持ってますか?」
「なんも持ってない」
やっぱり……
「私お金とか持ってなくて…ごめんなさい。知り合いを呼んだので、ちょっと待っててくださいね」
「なんであんたが謝んの?俺のことだし自分で払うから」
この状況を暁斗くんに連絡をした。
変なことに巻き込まれんなって怒られたけど。。
相変わらず怖かったなぁ。
とりあえず暁斗くんが来るまで待とう。
「あなたの親御さんに連絡とかしなくて大丈夫ですか?番号教えてもらったら私かけてきますよ」
「…いや、いい。親とかいねーし」
そんな……
「あんた、名前なんてゆーの?」
「私ですか?えっと、伊織って言います」
「へぇ〜」
得体の知れない男の子に名前を教えてしまった。
でも、なんか不思議だけど悪い人には思えないんだよね。
「あの…あなたの名前はー…」
ガラッ!!
「いお!」
「暁斗くん!」
暁斗くんが病室までやってきてくれた。
暁斗くんを見た瞬間ホッとしたのか、涙が出てきた。
「何考えてんだよ!変なことに首つっこみやがって」
私は暁斗くんに抱きついた。
「ごめん…なさい」
怖かった。ほんとはすごく怖かった。
「ケガねぇな。ったく…心配かけんな」
頭をポンポンと撫でてくれる手が温かくて優しくて、安心する。
「暁…兄?」