大嫌いな王子様 ー前編ー
「おかえりなさいませ、暁斗坊っちゃま、和希坊っちゃま」
少しお家の中がバタついているように感じる。
和希くんが帰ってきたからかな。
「私、お手伝いしてきます」
私は牧さんの元へ向かった。
「伊織、ウチに住んでるんだ。なんか面白そう」
「余計なことすんなよ」
「んー?なに?余計なことって」
「…飯田、あと頼む」
「かしこまりました、暁斗坊っちゃま」
暁兄は部屋の方へ向かって行った。
「和希坊っちゃま、お部屋へ案内します」
「いいよ飯田さん。ちゃんと覚えてるし」
「かしこまりました。ですが、今回だけはご案内させてください」
「ふーん。わかった」
なんか…
「なんかさ、家の雰囲気変わった?」
「そのように見えますか?」
「うん。暁兄も変わったね」
「そうですね。伊織様のおかげだと存じます」
「へぇ〜…」
ますます興味がわく。
「坊っちゃま」
「ん?」
「ご無事でなりよりです。暁斗坊っちゃまはずっと…和希坊っちゃまを探しておいででした」
「………飯田さん、父さんは?」
ガチャッ
俺の部屋に着いて、ドアを開ける飯田さん。
「旦那様は現在海外赴任中でして、しばらく帰ってきません」
「そっか」
それならよかった。
「あ……」
1年ちょっと出ていたのに、部屋の中は何も変わってなくむしろ綺麗になっていた。
「暁斗坊っちゃまが、和希坊っちゃまがいつ帰ってきても大丈夫なように、と日々仰っておられました」
「ふーん…」
暁兄……
「坊っちゃま」
「ん?」
「遅くなりましたが、おかえりなさいませ。ご無事でなによりです」
「…ありがとう」
俺、帰ってきたんだな。
ーーーーーーーーー
コンコンコンッ
「和希くん、晩御飯の準備が出来ました」
応答なし。
コンコンコンッ
しーーーーーん
「勝手に…失礼します!」
開けちゃえ
「寝てる…」
ベッドで眠っている和希くん。
あんなことがあった後だもんね、疲れてるよね。
今はゆっくり眠らせてあげよう。
パタンッ
お風呂入ってぼーっと考える。
今日はなんか色々あったなぁ。
もしかしてだけど…
暁斗くんがケンカしたりしてでも探してたのは…和希くんだったのかな。
怖そうな人たちと一緒にいたもんなぁ…
それにしても、病院からの帰りの車の中はカオスだったなぁ。
暁斗くんは沈黙だし、和希くんはなぜか私にすごい話しかけてくるし…
天然くんだからあんま会話通じないところあったけど…
(回想)
「すげー。スマホってどんどん画面でかくなってるね」
「そうだね。って私もこんな良い物持ったの初めてだから…」
「スマホにイイモノとワルイモノとかあんの?あっ!ウイルスにかかってるスマホとか、かかりやすいスマホとか?」
「…………ごめんね、私の伝え方が悪かったね」
(回想終了)
家を出てからスマホも持ってなかったみたいだし…
たぶん色々時が止まってるんだろうなぁ。
何か少しでも私に出来ること…
なにより、今の暁斗くんが心配。
和希くんが無事見つかって安心しただろうけど…なんか夜ご飯の時も暗かったしなぁ…
髪を乾かして脱衣所を出る。
「あれ…暁斗くん」
「風呂なげー」
ドアを開けたら、暁斗くんがいた。
「ごめんね、お風呂まだだった?」
待たせちゃったかな。
「いや、お前待ってたの」
「…そうなの?」
「ちょっといいか?」
「はい…」
私たちは暁斗くんの部屋へ向かった。