大嫌いな王子様
ep.15 坊っちゃまたちの兄弟関係
「伊織〜。ここ痛い〜」
「ここですか?湿布貼り替えましょうか?」
「ねぇ散歩行こうよ」
「今仕事中なので!」
なんなんだ。。
喋ってくれるのは嬉しいけど、暁斗くんと違って甘えたで天然な和希くんにあれから毎日振り回っされぱなし。
「ねぇ、牧さん。伊織ちょっとの間借りてもいいよね?」
「えー…そうですねぇ…」
牧さんがNo言えないのわかってて言ってるな!?
「和希くん!今は仕事中なのでごめんなさい。もうちょっとで休憩なのでその時でもいいですか?」
「はいはーい。待ってる」
なぜか私に懐いて?くれている。
謎すぎるんだけど。
「牧さーん。ジュースちょうだい」
「かしこまりました」
晴の方が年上に見えてしまうぐらい、幼く感じる…。
そこが可愛くもあるんだけど。
「おい」
仕事がひと段落ついたのか、ダイニングへやってきた暁斗くん。
「いおや牧さんを困らせるな」
「別に困らせてないよ。ねー?伊織」
自覚なしかいっ!!
「だいぶ困ってます」
「わー!伊織ひでー!」
こういうことはハッキリ言わないと。
「暁兄、これ見てよ。スマホやっと設定出来た」
「ほとんど飯田がやったんだろ」
家出中の間、スマホを持っていなかった和希くん。
久しぶりに持てて、なんだか嬉しそう。
今ちょうど春休み期間だけど…来月から学校ちゃんと行くのかな?
なんで家出してたのかな?
正直・・・むっちゃ気になるやん!!
でも暁斗くんや和希くんが話したいって思ってくれるまで聞かないつもり。
私から聞くのは違うと思うし。
昨日の暁斗くんの悲しそうな表情が頭に浮かぶ。
暁斗くんの心が…少しでも晴れてくれたら・・・
まぁ、、、このふたりが仲良く過ごしてるならそれでいいんだけど。
ーーーーーーーーー
「ねぇ伊織」
廊下の窓掃除をしていたら肩に顎を乗せてきた和希くん。
「おわっ!な、なんですか!?」
スキンシップが近い!
「暇なんだけど。相手して」
「私仕事中なんで」
「俺の相手も仕事だと思って」
意味不明な理由を言い出した。
「そんな仕事ないです」
「暁兄も伊織もケチだ」
「ケチはこんな時に使うんじゃないんですよ」
ほんとに甘えたさん。
「あと10分で休憩なんでお散歩行きますか?何かしたいことありますか?」
「やった!じゃあー…」
ん?
私今、バドミントンしてる??
スカッ
打ち返しそびれて、羽根が落ちてしまった。
「伊織、下手〜」
「だって外なんですもん!風吹いてるし」
なぜバドミントンなんだ…!?
「あと20回して負けた方が腕立て伏せ50回ね」
「あと20回て!!!腕折れるわ!!」
しかも腕立て伏せ50回て!
絶対負けられない!!
でも・・・
「伊織〜!また負け〜」
こんな楽しそうな笑顔してくれるなら、まぁいっか。
「和希くんに有利な風が吹いてます」
「有利な風とかあんの!?」
「和希坊っちゃま、とても楽しそうですね」
「いおにわがまま言ってんだろ」
「休憩時間に遊んでくださっているようです」
2階にある仕事部屋。
そこの窓から覗くとちょうど庭があり、バドミントンをしてるふたりが見える。
「あれだけ探して見つからなかったのに…いおはすぐ見つけた」
「伊織様は何か不思議なお力があるのですかね」
「ふ…そうかもな。助けられてるのは俺の方だよ」
和希の心に空いた穴を埋められるのはー…
バンッ!
ビクッ!!
窓に何かが当たった。
「暁兄もするー?伊織弱過ぎて相手にならないんだけどー!」
「和希くんひどい!!だから風のせいですって!!」
「風なら俺も同じリスクじゃん。センスないよ伊織」
「やっぱ兄弟!!キモ兄貴にキモ弟!!」
「は?うるさいんだけど」
母さんが死んでから、家の中は静まりかえってた。
それが今こんなに賑やかになっている。
カラッ
窓を開けた。
まだ肌寒いけど、春の訪れを感じる風が吹いている。
「お前らうるさい。今行くから待ってろ」
「坊っちゃま、楽しんできてくださいね」
「運動不足の解消なだけだ」
「わーい!暁斗くん来てくれますよー!私のチームね」
「俺のチームに決まってるだろ!」
下からバカみたいに騒ぐ声が聞こえる。
なんだろう、すげーうるさいのにすげー心地いい。