大嫌いな王子様 ー前編ー
あーーー眠い。
ひくほど寝不足。
そりゃさ!
昨日、あんなキ……キスされたら!!
あんなこと言われたら!!
また昨日のことを思い出す。
ボンッ!!
顔が赤くなる。
あれはほんとに暁斗くんだったの!?
あんな甘い言葉を言うなんて…
「おい」
「はっはい!!」
振り向くと、そこには昨日甘い言葉を言ってくれた王子様が。
「通路塞ぐな。仕事しろ。辞めるか?」
・・・・・・・・
スンッ
一気に現実に戻った。
「すみません、頑張ります」
やっぱり昨日のは夢だ。
私、優しい王子様を願い過ぎて妄想して、それが夢になったんだ。
「グダグダすんな」
安定の俺様+塩だ。
これが普通なんだから。
朝イチの会話がこれ。
そのままスタスタと歩いていってしまった。
「暁斗坊っちゃま、なんだか少しお顔が赤いような…?」
「うるさい飯田。気のせいに決まってんだろ///」
ーーーーーー
コンコンッ
「暁兄、ちょっといい?」
「どうした?」
仕事部屋に和希がやってきた。
「今起きた」
「もう13時だぞ。昼夜逆転しすぎ」
「明日からは規則正しくなるよ」
「え…」
パソコンを打っていた手を止める。
「学校…行くのか?」
「うん。とりあえず少しだけ頑張ってみる」
どういう心境の変化だ?
でも、和希が学校に行く気になってよかった。
「伊織のためにも頑張ってみようかと思って」
「いおのため…?」
「うん。あんなに一生懸命話してくれたらその気持ちに応えたくなるじゃん」
昨日もしかして…
「昨日お前の部屋にいたのって…」
「そ。話聞いてもらってた」
そうか。俺は…ヤキモチ妬いて……情けねぇ。。
「暁兄、ヤキモチ妬いたんじゃない?」
ドキッ!
「は?んなわけねぇだろ」
「ふーん」
ガチャッ
部屋を出ていく和希。
「和希」
「ん?」
「何かあったらいつでも言え。しょうもないことからも奴からも守ってやる」
あ…
【大丈夫だよ。暁斗くんも飯田さんも牧さんも…みんなそばにいるから。あ、私もオマケでつけてください】
昨日の伊織の言葉が頭をよぎる。
「クスクス」
「なに笑ってんだよ」
「んー、伊織の言う通りだなと思って」
「は…?」
「暁兄、そんな優しいこと言ったって伊織のことは諦めないからねー♪」
そう言って和希は出て行った。
「意味わかんね…」
和希にはまだ聞けてないことが山程ある。
でも、それを急かして聞いて何になる。
もう同じことは繰り返さないんだ。
いお…
あとで昨日のこと…謝るか。。
ガターーーンッ!!
「和希くん!!散らかさないでください!!」
「伊織が悪いんじゃーん」
部屋の外から聞こえるふたりの声。
イラッー…
「やっぱ謝んねー」
賑やかな日常が俺を囲むようになった。