大嫌いな王子様 ー前編ー
ep.16 遅れ過ぎたバレンタインデー
「へぇ〜。弟くん、今のところ楽しそうに学校行ってるならよかったじゃん」
「ほんとに。まぁまだクラスメイトとはあまり打ち解けてないみたいだけど…」
そこは私も偉そうに言えないが。
「もう1人弟が増えたみたいで可愛いの」
「世話焼き過ぎないようにね」
新学期が始まり、私と暁斗くんは高2になり和希くんは中3で初の中学校生活の始まりとなった。
みっちゃんとは今年も同じクラスになれて、ほんとによかった。
「阿部さーん。今日の委員会一緒に行こう」
「うん。ありがとう」
私も少しずつだけど、新しいクラスメイトの子たちと馴染めてきた。
今までバイト三昧で委員会も全然出席してなくて、クラスメイトの子たちとも必要最低限の会話しかしていなかった。
「伊織、嬉しそう」
「え!そっそうかな?」
「いいことじゃん。伊織の張り詰めてた空気が柔らかくなったんだよ」
張り詰めてた空気か…
その空気を和らげてくれたのは、間違いなく暁斗くん。
「なんか…暁斗くんに会いたいなぁ」
無意識にポロッと出た言葉。
「超ラブじゃん!羨ましいわ」
「えっ!違う違う!今のは違う!」
ヤバイ!なんかすごく恥ずかしい!!
「そんなラブな彼にバレンタインのお返しはちゃんともらったの?」
・・・・・・・
「ばれんたいん?」
「…は?あんた、なにもしてないの?」
すっっかり忘れてた!!!
「だって、今までの私には無縁なイベントだったし!」
チョコ大量売りの2月も私には無縁だった。
そもそも鬼節約してたから、お菓子とかは晴にあげてたし。
「えーっと…やっぱヤバイかなぁ?」
「どうだろ?御曹司くんが気にしない人なら別にいいんじゃない?」
暁斗くんは気にしないタイプに思うけど………
次の日の夕方。
千円を握りしめて、学校帰り猛ダッシュでスーパーへ。
仕事までに帰らねば!!
千円は大金。
使うのも手が震えるが、みっちゃんに教えてもらった材料をカゴに入れていく。
そしてラッピングを探しに100均へ。
さすが100均様。
可愛いラッピングがたくさん。
そしてまたまた猛ダッシュで帰る。
「牧さん」
「はい、どうされました?」
「今日の夜、22時以降にキッチンをお借りしてもよろしいでしょうか?」
「構いませんが、何かお手伝いさせていただきましょうか?」
「いえ、大丈夫です。キッチンを少しお借り出来ましたら」
「かしこまりました。お気を遣わず仰ってくださいね。では、料理長に伝えておきます」
「はい、いつもありがとうございます」
お風呂も入り、万全の状態。
23時過ぎ、そーっとキッチンにやってきた私。
たぶん暁斗くんも下にはおりてこないだろうから、バレる可能性は低い。
広い家はこういう時便利だなぁ。
ガザゴソと今日買ってきたものを取り出す。