大嫌いな王子様 ー前編ー
ep.17 近くて遠い存在
「和希くん!早く起きてください」
「今日は休む」
「ダメに決まってるでしょ!遅刻しますよ!」
「眠いから無理」
このわがまま坊ちゃまめ…
寝起きが悪い和希くん。
月に何回か、こういう日が起こる。
バシッ
暁斗くんがやってきて、布団に潜り込もうとする和希くんの頭を叩いた。
「テメェ、あと5秒で起きなかったらしばきまわすぞ」
あれだけ起きなかったのに、すぐにむくっと起き上がった和希くん。
お兄ちゃんっ子。
「いおもコイツなんか起こすな。ほっとけばいい」
いや〜…そういう訳にはいかないですが……
「お前のせいでいおも遅刻しかけだ。全員あと5分以内に車に乗れ」
私も5分以内!?
急いで部屋に戻る。
「伊織!」
「はい?」
部屋を出ようとしている私を呼び止める。
「一緒に登校できるね♪」
無垢な可愛い笑顔でニッコリ笑う和希くん。
だけど……
「今そんなこと言ってる暇ないから!!早く顔洗って歯磨きして着替えなさい!!」
「伊織、お母さんみたいなこと言うね〜」
ほんと、なにを呑気な………
「ゼェハァゼェハァ…」
「伊織、息荒いね」
「誰のせいで…!」
なんとかギリギリ車に乗れたわたしたち。
和希くんを急かしまくって、間に合った。
暁斗くんは涼しい顔して、優雅に車に乗って待ってたけど。
「4分36秒。ギリだな」
やっぱこういう所、むっちゃムカつく!!!
朝からイライラしながらの登校となった。
「なぁ、明後日の土曜の夜仕事休みな」
「え?なんでですか?」
仕事中や仕事の話は敬語にしようと思ってる。
雇われだし、きちんと線は引きたいし。
「明日、金澤ホールディングスがウチの傘下に入るニュースが出る。まぁウチが業態を拡大していくってことなんだけど」
金澤ホールディングス…って確か、ダンスレッスンの時はじめ暁斗くんとペアだった子のお家のことだよね…。
「その発表を兼ねて明後日の夜、パーティーが開かれるんだけど…」
「はい??」
珍しくなんだか言いづらそうにしている。
「もしよかったら…一緒に来てほしい」
えっと…
「私がですか…?」
なんで私なんかが…
しかもそんな華やかそうなパーティーに私なんか…
「無理にとは言わない。少し考えてくれるか?」
「は…はい」
「伊織〜、そんなん行かずに俺と遊ぼうよ」
「お前は黙れ」
相変わらずの和希くん。
私は学校前でおろしてもらった。
門の前でみんなに見られることも、さすがに慣れた。
「おぉ〜。重役出勤じゃん、おはよ」
「みっちゃん〜!!!」
聞いてー!!!!
「うわっ!なに!?」
会った瞬間みっちゃんに抱きつく私。
みっちゃんに相談するしかない。
休み時間。
「おぉ〜。お金持ちって言うか財閥って言うか…そういう世界って実感するね」
「うん、ほんとに。なんで私なんか…と思って。絶対場違いだし、そもそもおかしいし」
「いいんじゃない?その不安な気持ちを素直に御曹司くんに言えば。ちゃんと受け止めてくれる人だと思うよ」
「いいのかな…。せっかく言ってくれたのに」
「うじうじそうやって考えてる方が御曹司くんも可哀想だよ。ちゃんと自分の気持ちを自分の口で伝えな」
ビシッと言ってくれるみっちゃん。
こういう所が大好き。
「うん!!みっちゃんありがとう!!気持ち固まった!!」
「あんたってさ…Mっ気あるよね」
「ん?なにが?」
「いい。なんでもない」