大嫌いな王子様 ー前編ー
夜。


コンコンッ


「はい」

「あ、私なんだけど…今いいかな?」



ガチャッ

暁斗くんから部屋のドアを開けてくれた。



「どうした?」

「えっと…朝の話しなんだけど」

「あー…。入って」


お風呂上がったところなのかな?
髪がまだ少し濡れてる。


「暁斗くん、髪ちゃんと乾かさなきゃ風邪ひくよ」

「ん?あぁ、大丈夫だよ」


タオルで髪を拭きながら話す暁斗くんもカッコいい………

ハッ!!!

暁斗くんに見惚れてる場合じゃなかった!!


頭をブンブン横に振る。


「お前さ、定期的にそれすんのなに?」

あ、変に思われてる。




「あのね。誘ってもらったのはすごく嬉しいんだけど…想像出来ない世界というか…そもそも私なんかが行っていい場所なのかなって…絶対場違いだと思うの。それが不安で」


言えた。
素直な気持ち。


身分なんかもちろん不相応。
仕事のこととかなにもわかってない、いち高校生が行っていい場所なわけがない。



「そうだよな。不安にさせてごめん」


暁斗くんが私に近づいて、頭を撫でてくれた。

最近、優しい時が増えてきた。



「俺のわがままだよ。いおにただ隣にいて欲しくて」

わぁ。
どうしよう。
すごく嬉しい。



「俺の大事な人って紹介したい」


ドキンッ

そんなまっすぐな目で見つめられたら、Noとは言えない。
ううん、言いたくない。

暁斗くんの言葉が嬉しすぎて、調子に乗ってしまいそう。



「いおに不安な思いはさせない。…ついてきてほしい」


私、それでも断るんだよ。
絶対場違いなんだから。

さぁ、早く!断れ、私!



「…頑張ります」



ーーーーーーーーーーーーー


「あーあ。やっぱ断らなかったか」

「だってね!暁斗くん、大事な人って言ってくれたんだよ」

「まぁ浮かれるのはわかるけど…。あんた、明日何着ていくの?」



・・・・・・・


ほんまや!!

「なんもない!!」

「御曹司くんが用意してくれるだろうけどね」

「っていうか、なにもマナーとかわかんないんだけど!」

「いや、私もわからんわ!」


やっぱり不安になってきた。。




———————————

やってきてしまった土曜日。


「あの〜暁斗くん。これは…?」

「この中から好きな服選んで」


可愛いワンピースが5着、私の部屋とは別のゲストルームに用意されていた。

きました!お金持ちムーヴ!!



「私が選んでいいの…?」

「あぁ。いおが好きな服を着てほしいから」


ここ最近発言が優しさ多めで怖いんですけど!!
…なんて、口が裂けても言えないけどね。



どれもほんとに可愛い。
でも1着、特に気になるものがあった。


パステルカラーの薄い黄色のワンピース。



「ドレスも黄色だったのにいいの?」


「また違う感じの黄色だし、それに…」

「それに?」

「暁斗くんが選んでくれたドレス、ほんとに嬉しかったから。今回はこれを着たいです」


暁斗くんがドレスの時に選んでくれた色。
人生で黄色なんて華やかな色を着たことがなかった。



「ふーん…わかった///」

プイッと向こうを向いてしまった暁斗くん。



「では伊織様、あちらのお部屋でメイクなどいたします」

「あ、はい。宜しくお願いします…」


私はダンスパーティーの時にメイクなどセットしてくれた女性たちと別の部屋へ向かった。
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