大嫌いな王子様 ー前編ー
「あっあちらです。こちらに来られますね」


振り向いた瞬間、ドクンッと心臓が大きく波打った。

クリスマスの日が脳裏に蘇る。


足が震えてきた。




「やぁ暁斗。それに…和希……?」

「どうも。お久しぶりです」

「なんだ、帰ってたのか。連絡ぐらいしなさい」

「俺になんて興味ないと思ってたんで」


えっなに、この空気。
寒気するんだけど!!

和希くん、すごいケンカ腰じゃんか!!



「…父さん、今日はまだアメリカだと聞いていたんですが?」


そうだったの!?
暁斗くんの表情もかなり怒りに満ちてる…。


「あぁ。その予定だったんだか、急遽帰ってこれることになってね。また明日からアメリカだが」

「は……そうですか」

暁斗くんが空笑いをした。



「皆実会長、優秀な息子さんをお持ちで実に羨ましい」

「いえいえ。とんだバカ息子です」



暁おとの威圧感?というものがすごくて、足の震えが止まらない。




「お父さん」


あ…


「おぉー優子、来たか。皆実会長と暁斗さん、和希さんに挨拶なさい」


金澤さんだ。


「この度はありがとうございます」


とっても素敵なドレスを着ている金澤さん。
すごく綺麗。



バチッ

金澤さんと目が合った。



「ところで…そちらのお嬢さんは?」


うわぁ。。そうなるよね。



「私のー…「使用人です」



ドクンッ!!


暁斗くんの言葉を遮るように、暁おとが言った。


「使用人…使用人がどうしてこちらに?」

「ははは。日頃頑張ってくれてますからね、たまには華やかな場所に招待したいと思いましてね」

「なるほど。さすが皆実会長、素晴らしいですな」



使用人……

なにも間違ってなんかいない。



「こんな場所にはもう二度と来れないだろうからね。しっかり目に焼き付けておくといい」


【二度と来れない】

二度と来るなって意味だ。



「父さん、いい加減にしろよ!いおは…「はい」


負けないんだ。
暁おとの嫌がらせなんかに

こんなしょうもないことに


なにより、暁斗くんに迷惑かけたくないから


「会長や坊っちゃまたちに、このような場所にお招きいただき感激しております」

こんな言葉遣い、全然慣れてないのにね。


人間てすごいな。
本気になったら出来るじゃん。

こんなことを考えられている私は、まだ余裕があるのかもしれない。




「いお、そんなこと言うな」

「あの!お…お手洗いに行ってきます!」


そう言ってその場を離れた。

みんなの顔は見れてない。
もちろん暁斗くんの顔も。



「いお!」


ガシッ!

「チッ…父さん、離せよ」

「暁斗、今日がどんな場かわかっているんだろうな?わきまえなさい」


ウザすぎる、このくそオヤジ。

何度も確認した。
父さんが帰ってこないって。
だから、いおを連れてきたのに。

今すぐ、いおの元に行きたいのに



「金澤社長、あちらで我々と写真をお願い出来ますか?先程カメラマンに頼まれましてな」

「もちろんです!こちらからお願いさせていただくことですのに、申し訳ございません」


やられた…父さんに。

こんな場所に来なかったのに。


いお…!
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