お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜
「瑞希、準備ができましたか? 父が挨拶をしたいと言っているんですが……」

 メイク直しが終わったタイミングで、会長と康弘が一緒に入ってくる。それを見た知紗たちが「頑張ってね」と言って退室していった。

(さすが天崎さん。誰よりも私に映えるメイクを心得てるわ)

 鏡を見て感動していると、会長がとても優しい顔で瑞希に手を差し出してくる。

 会長とは警察に話をしにいった時ぶりなので少し緊張してしまうが、瑞希はにこやかに微笑んで会長の手を握った。

「お義父(とう)様。あの時は私のために色々と心を砕いてくださり、ありがとうございました。そのおかげで落ち着いた気持ちで警察の方とお話ができました」

 改めてお礼を伝えぺこりと頭を下げる。会長の慈愛に満ちた目を見ていると緊張が和らいでくる気がする。

「今日はめでたい日なんだから、あの日のことはもういい。そんなことより、君の研究成果を見せてもらったんだが、本当に素晴らしかった。瑞希さんのような人がお嫁さんに来てくれるのは康弘にとっても我が社にとっても僥倖だ。本当にありがとう。こいつは瑞希さんがいないと駄目なようだから、大変かもしれないが頼んだよ」
「もったいないお言葉をありがとうございます。今後も研鑽を積んでご期待に添えるように頑張ります」

 会長が深々と頭を下げたので瑞希も同様に頭を下げる。その隣で康弘が瑞希の手を握って少し困った顔をしていた。

「瑞希、泣くのはまだ早い。メイクが落ちますよ。先ほど天崎さんに直してもらったばかりなんですよね?」
「だって康弘さん……嬉しくて」

 瑞希が涙ぐむと康弘がハンカチでそっと拭ってくれる。その時、がやがやと騒々しい声が聞こえたかと思うと、瑞希の母と康弘の母が連れ立って入ってきた。その後ろには気まずそうな顔をした兄もいる。
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