お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜
 そのあと会議室に行くと、社長たち以外にほかの研究員や社員もいたので、マスクを取るように言われることもなく仕事の話がちゃんとできた。

 瑞希の論文を読んだ露口の意見も聞けて、彼が私的な理由だけで呼びつけたのではないのだということが分かりホッと息をつく。

(びっくしりした……ちゃんと読んでくれていたんだ。てっきり呼び出す口実に使われたと思った……)

 自意識過剰さに恥ずかしくなって、頬を掻く。


「思っていた以上に有用性が高くて驚きました。入社一年目でこのような結果を出すとは……やはり原田さんは優秀なんですね」
「ありがとうございます。この研究は会社に入る前からずっとしていたものだったんです。でもそれを認めてくださりサポートをしてくれた皆がいたから無事に形になりました。なので私だけの成果ではありません」

 面映ゆい気持ちになり俯くと、露口がほうっと息をつく。

「謙虚なんですね。そういうところも気に入りました。では今後はチームを組んでもっと大々的にしましょう。予算は惜しみませんので」

(やった!)

 昨日の変なプロポーズなんかよりも今の言葉のほうが断然いい。瑞希は興奮がちに露口の手を握った。

「ありがとうございます! 私、精一杯頑張りますから!」
「ええ、期待していますよ。では、今回開発に成功した新規有効成分の特許や権利を会社に帰属するという契約を結びたいのですがよろしいですか?」
「もちろんです」
「では、これを書いてください」

 二つ返事で了承すると、露口が瑞希の前に一枚の紙を差し出した。意気揚々とサインしようとして固まる。

(え? これって……)
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